休日のくぼきのダーリン

土曜日は夕方までアルバイトだった。いつも通りのいつもの感じで、お客様にありがとうございますと言っていたらそれで終わった。時間が効率よくお金に変わっている感じだった。

面倒事は起こらないに越したことはないけどそれはそれで張り合いがないんだよな、と思う。そのまま一日が終わってしまうのはなんか嫌だったので映画を観に行くことにした。

映画は池井戸潤原作の「七つの会議」を選んだ。この映画は日本の電機メーカーが舞台だ。主人公が企業の秘密と闇を巡る争いに巻き込まれてしまうらしい。面倒事のオンパレードな予感がした。

映画は上司が部下達を叱責するシーンから始まる。ノルマ未達にぶちギレる上司。課長である主人公は課を代表して怒られていた。あまりの熾烈さに主人公は嘔吐しかける。なんとかやり過ごしシーンが切り替わった。今度はその上司がさらに偉い人から叱責されていた。

平気で観客を裏切ってくる。この映画序盤からとばしているなと思った。

その後は、はちゃめちゃな数の伏線が張られ、はちゃめちゃなスピードで回収されていった。敵役はテンポよく制裁されて次々と地方に飛ばされていった。

スピード感のある映画は状況説明をするために台詞が多くなりがちであるが、この映画はそうではない。一歩間違えればコントになりかねない顔芸で台詞以上のことを雄弁に語っている。特に香川照之は圧巻だった。唇のプルプルで何かを伝えようとしていた。

ネタバレになるので詳しくは言えないが、ラストシーンは敵役に同情していた。ある意味人間らしい選択で自分もそうしちゃうよなと思って観ていた。ダメなことをダメと認めることは年をとればとるほど難しくなるのだろうな。

最後までテンポよくしっかりとしたエンタメでとても面白かった。

 

このまま帰るのはもったいない気がしてもう一本観ることにした。二本目は、初めて月面着陸を果たしたニール・アームストロングを題材にした「ファースト・マン」だ。

結論からいうと中盤で爆睡してしまった。脚本があえて日常生活にフォーカスしていたらしく何も起こらなかった。いやいや、家庭内の不和はいいからロケットを映さんかいと何回も思った。淡々と計画は進み、淡々と月面着陸を成功させた。唯一、宇宙空間に出たとたん無音になる演出には鳥肌がたった。そういえば宇宙は無音だよな。

最後はもう一山欲しかったなと思いつつ家路についた。

 

帰り道、ゴタゴタがあった日に「ファースト・マン」を観ていたらきっと絶賛していたんだろうなと思った。