—なにやら道に迷ったようです。
生きるために、書く。
「人はね、目と鼻と口と耳と手と足があればどこにでもいける。なんでもできる。あなたはその耳が無いだけだよ。たったそれだけ」
母はわたしの目を見つめては続けた。
「だからあなたはどこにでもいけるよ、なんでもできるよ。大丈夫だよ」
明るい木目調で統一された落ち着きのある空間を提供している家族で来るようなお食事処でわたしは、ひとり、デンプンを多く蓄えている地下茎が芋になっているものを切り刻んで揚げたポテトとかいう料理を食べながらこの文章を書いている。
「暇」とかいう人間に絶望を与えるには充分過ぎる拷問にも等しい時間をわたしはひとりで持て余していた。 “「暇」と闘う” の続きを読む
そこは黄緑のかかった水色の天井だった。果てまで続く天井は終わりが見えなかった。天井にはわたあめのような白い雲がいくつか飾られていた。
目の前に不思議な構造物があった。建物と呼ぶには悩んでしまう、駅前によく置かれるような意味のつかめないモニュメントに似た、構造物だった。
バケツいっぱいの白にたった一滴の黄色を垂らしたような、白とは呼び難い色をした長方形のブロック状を不規則的に組み立てられていた。それはかなり高く、自然と黄緑のかかった水色の天井を見てしまうほどだった。