友達の形

私の友達は面白いアイディアを出してくる。ウクロップ入りクッキーなんて私には美味しい気がしないんだけど、でも彼がそう言うのなら試してみようかなと思う。

リフトに乗っている間、風が冷たかった。枝に雪を乗せた木々に囲まれた谷間を私たちは通過していく。Яさんが言った。
「ロシアの森に似ていますね」
「でもシラカバは生えていない」
私が言うと、彼は笑った。
「Сと同じこと言っている」

「どんなところに住みたいですか?」
「温泉のあるところがいい」と私が答えたら、Яさんは言った。
「Сと同じこと言ってるよ」
それがおかしくて私たちはまた笑った。

3人でスキーに行った。クラスノヤルスクでは一緒にアイススケートをしたことがあるけれど、一緒にスキーをするのは初めてだ。
「スキーでも行きますか?」と提案したのは私だ。ЯさんもСも楽しいこと、面白いことが好きな人たちだ。これまでにラフティングや島で魚釣りをやったことがあって、スキーもきっと楽しいだろうなという気がした。その予想は外れなかった。
Яさんが一番上手に滑れた。彼はロシアでスキーの経験があると言っていた。Бобровый Логで。秋の山登りを楽しんだ思い出の地だけれど、冬にはスキー場になるそうだ。へえー!冬のБобровый Логにもいつか行ってみたいな。クラスノヤルスクでは坂を滑り降りるのではなく、平坦な森の道を行くカントリースキーをよくする。私もやったことあるけど、正直、靴で歩くのとカントリースキーとどちらが便利なのかはわからなかった。
カントリースキーで鍛えられたおかげか、Яさんは雪の斜面をやすやすと登ってのけた。Сがカニ歩きで3倍くらい時間がかかっていたところを。私はというと早々に諦めてスキー板を外して歩いて登った。Яさんは上達が早くて、私が習得できずにいたジグザグ滑りをあっという間にマスターした。左右交互にすばやく体重を移動させてスピードを制御しながら滑り降りていく。
Cは安定した滑りをする。コントロールが上手いんだと思う。Сが転んだところを私は見ていない。それでいて私とほとんど変わらないタイミングで麓に到着していたからスピードも出ているはずだ。
私はターンでスピードを殺す滑り方しかできない。まっすぐ滑るとスピードが出過ぎて怖いので、ターンでブレーキする。ずっとハの字で滑ってもいいんだけどそれじゃ格好がつかないじゃないか。雪が凸凹で滑りにくいのもあったと思うけれど、たぶんどこか無理に力が入っていて、バランスを崩してひっくり返る。こけまくった。
本当はЯさんみたいなジグザグ滑りを私もできるようになりたかったんだけど、見て理解したつもりになっても、いざやると上手くいかない。
終わった後には滑り足りない気持ちが残った。もっと練習して上手くなりたい。またスキーに行かなくては。いつになるかわからないけど。

リフトに乗る間、СとЯさんの会話は途切れなかった。4人乗りのリフトに何度も何度も3人で乗った。斜面をスキーで下り降りるたびに私の耳は調子が悪くなる。寒さか、気圧の変化のせいだろうか。傍の2人がどんな会話をしているのかわからなくても、その雰囲気は好きだった。
時々ЯさんかСが私に話しかける。自分に向けられた言葉ならなんとか聞き取って会話に加わった。私とСは以心伝心であることが証明されたと思う。

帰りのバスの中、СのおすすめでMBTI診断をやってみた。質問に答えると自分の性格タイプがわかるという。Сは討論者。Яさんは論理学者。私は提唱者。
診断が合っているかどうかは別として、お互いに持っていない部分、似ている部分があるのは確かなようだ。理解できないと感じる時もあるけど、揺るぎない信頼でつながっている。頼りにするし、頼られたいとも思う。だから一緒にいて居心地良く、面白いんだなと思う。
СはСでなければいけないし、ЯさんはЯさんでなければいけない。そうでなかったら私はこんなふうに笑えなかっただろう。

不思議だな。8年前、クラスノヤルスクで出会った私たちが、今も友達でいられるなんて。
2人が私のことをどう思っているかは知らないが、 ЯさんとСは私にとって特別な存在だ。私は内向的な人間なので誰かと一緒に過ごすよりも1人の時間が好きだ。けれどもЯさんとСとなら、一緒の時間も悪くはないなと思える。久しぶりの再会でもЯさんは屈託なく私に話しかけてくる。一緒にいると、私はСの優しさに甘えてしまう。私が聞き取りづらい時、Сはスマホのメモに文字を打って見せてくれる。そういう気配りを自然にできる人だ。2人が話している横で私は黙って座っていて、時々会話に参加する。その距離感が居心地良いんだ。
クラスノヤルスクにいた時みたいにしょっちゅう会うわけではなく、年に1回会えるか会えないか。会わない時間の方が多いのが、むしろ会える喜びにつながっている。どうかこの3人がいつまでも友達でいられますように。

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