なんでもない一日

ゆらり、ゆらりと空が傾く。頭上を月が行ったり来たり。
私はブランコの鎖を握る手に力を込めた。飛び降りたい衝動と恐怖で心が揺れる。やめとこ、飛び降りたら鉄柵にぶつかって骨が折れるかも。

今日は思い切りのんびりしたよ。昼までに3度寝して、昼からは小説を書き始めた。とても楽しかったけど、パソコンの前に座っていることにもいい加減疲れてしまい、散歩に出かけた。暗くなった頃合いを見計らって家を出たのに、涼しくなったかと思えばそうでもない。そうだ、ブランコに乗ろう。

まだ風の中に揺られているような感覚が残る足を、だらだらと歩かせた。なんども数え切れないほど通った道を家へと辿っていく。
両側のさびれた工場も、かさぶたのように上塗りされたアスファルトの割れ目も、今はまだ変わらずに昔のままだ。ここもいつかは、元田んぼだった住宅地や、平らに舗装された家の裏の道のように、かつての面影を失っていくのだろうか。

今日みたいになんでもない日でさえも、月は欠けていて、もしくは、満ちている。時間は決して止まらない。
私はブランコから飛び降りなかった。無事に一日を生き延びた。こうして命ある限り、昔を懐かしんでやるさ。歳月の変化の目撃者であり続ける。

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