世の中への不満をためてそうな顔

「お前日本人じゃないのかよ」
いやなお客さんはめったにいないけれど、私が心の平安を失っているときに限ってやってくるのはなぜだろう。

その時、私は感情をうまくコントロールできずにいた。ちょっとしたことでひどく落ち込んだ。

ことの発端はバイトとは関係ないこと。予定を中止にしてしまったことをとてもとても後悔していた。台風や体調を考慮しあきらめてしまおうとする理性的な物言いの裏で、心の中にじわじわと広がる失望感を押さえきれない。
「また今度行けたらいいな」というのは本心じゃない。やっぱりそれはうそです。今日、どうしても、行きたい…!

前言撤回してしまいたかった。わがままは喉元まででかかるのに、いざ口に出そうとするとやっぱり言えない。

葛藤の中、何を言われても上の空で、ただただ悲しい。
人に冷たくされるのも、優しくされるのもこころぐるしい。今の私の心には、誰のどんな気持ちも受け止める余裕もない。ありがとうを言うにしても、ごめんなさいの代わりでしかない。ごめんなさい。私は日本人です。ただ耳が聞こえないだけ。

バイトを終えると一目散に帰った。しばらくひとりになりたかった。部屋の天井の模様を見るともなく眺めながら、ぼうっとして過ごす。何も考えたくない。

ついには投げやりになる。
…やっぱり、いいや。どうでもいいよ。

今日はどこにも行きたくないのだ。昨日の夜作ったてるてる坊主が、雨を止めてくれているのが虚しい。いっそ大雨にしてくれればよかったのに。
そう思っていたら降り出してきた。窓から雨粒が吹き込んでくる。別に天気なんてどうだっていいよ。今日は行かない。

……わがままが、捨てられる子犬のような目でこっちをじっと見ている。本当は行きたいんでしょ?

どうしてもあきらめきれなくて、長いこと私はふてくされていたようだ。
「ねむれねむれ」と言われるままに目を閉じた。そのうちに、ようやく落ち着きを取り戻す。

前からぼんやり疑問に思っていたことがある。
急な予定の変更を受け入れられないのは、発達障害ぽいのではないか。それとも、どんな人にも気持ちの切り替えがうまくいかない時はあるのだろうか。普段は大丈夫でも、今日は体調が悪くてそのせいなのか。
考えているうちにだんだんわからなくなる。「普通」と、「普通でない」の違いは何なのだろう。人を「普通」か「普通でないか」に分けるやり方はあまり好きではないと思う。日本語がわからないなら日本人じゃないというように、短絡的に決めつけるみたいなのは。

ただ私にわかるのは、自分にとって普通でない時がある、ということ。気持ちをコントロールできない時の対処法を考えておかないといけない。

今朝のバイトでの出来事も、落ち着いた頭で考えればなんということはない。酔っ払いさ、きっと世の中への不満がたまっていたんじゃない。

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