ロシア語メモ жаворонок

ホストファザーが運転する車の中で、今日見た動物の中で何が一番良かったか、という会話をしていた。
「ヘビが良かった」弟くんが言った。
最初私はロシア語の「ヘビ」がわからなくて、そしたら弟くんはヘビの真似して手を動かして、それでやっと理解できたんだ。
「とても大きいヘビがいたよね」
弟くんはヘビの太さを手で示してみた。えー、そんなに大きかったかな。
10歳の男の子ってこんなに大人だっけ。ロシア語があまりわからない私のために、弟くんは何かと気を使ってくれたのだった。

ヘビ。
ロシア語でちゃんと、「ヘビ」と言っていたはずなんだけど、ヘビのロシア語を忘れちゃった。
そして私はなんて答えただろう。その日見た動物の中で一番好きだったのは?
シマウマがいた。キリンがいた。ラクダがいた。ワニとヤモリと魚も見た。チョウザメが水槽を泳いでいるのも。
タラカン(=G)も。
えっ、動物園にはこんなのもいるんだ。ロシアにはペットとして飼う種類のタラカンがいるのらしい。びっくりしたよねえ。

留学して1ヶ月目、まだ雪が降る前の10月だった。週末ホームステイした私を、ホストファミリーは動物園に連れて行った。
その日私はたくさんの動物を見て、たくさんのロシア語を覚えたはずだ。ヘビは忘れてしまったけど、タラカンのことは覚えている。

ホストファミリーは私のことを指して、「жаворонок (ジャーバラナク)」と言った。
あ、本当に言うんだ。
この言葉を最初に教えてくれたのは、ロシア人ではない。日本にいる時に先輩がロシア語講座を開いてくれたんだ。
早起きの人のことをロシアでは「жаворонок、ヒバリ」と言うんだよ。

日曜日の朝、ホストファミリーはなかなか起きてこなかった。私が起きたのは8:00頃だったと思う。
誰かが起きだしてくるまで、静かに猫と遊んだ。3匹いる猫たちはかわるがわるやってきては、私の使っていたベッドの上に乗ってきた。
シマ、ブーシア、ゼナ。
猫の名前は覚えている。部屋に案内された後、ホストファミリーの女の子が教えてくれた。家の中のあちこちにいる猫をわざわざ私に紹介するために、名前を呼んで探し回って。

もうずっと会っていないのに、彼らの話し方が今も耳に残っているような気がするんだ。
Музыка языка. 言語の音楽。
ひとりになって記憶の引き出しをそっと開けてみると、オルゴールが鳴るようによみがえってくる。あの時はほとんどわからなかったように思えたロシア語の響き。

どうかずっと忘れないでいたいと思う。私にとって懐かしく、大切な思い出だから。

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