Take me home

わたしはときどき、家にいながら「帰りたい」と思うことがある。

何か苦しいことがあって、は〜〜〜んって涙目になりながら空を仰ぎ見るんじゃないよ。ないない。ほんとうにふとした瞬間に何かに対して恋しさを思い出すんだ。

今日はトイレで「おしり」の強弱ボタンで遊んでいるときに思った。

でもここは我が家である。れっきとした我が家だ。父も母も弟もいて、家に帰れば常にあたたかいご飯が待っていて、おやすみをいう相手がいる。

わたしはなにがいったい不満だというのだ!親不孝者め!

 

わたしはちょっと過去を美化しすぎるところがある。

恋人と別れるときも、当時はただただ「別れたい」だけだったはずなのに、今思い返すと「こんなところが好きだった。今、彼と続いていたらどうなっていただろうか。あいつ元気にしているかなあ・・・」なんて思いにふけってしまう。なんてこった、都合がいいように記憶を置き換えているぞ。

というのも、年末に物置を大掃除していたら高校時代の日記がでてきた。それはそれは、もう全身の毛穴から内臓がゲロとともに出てきそうな酷さだった。わたしが思い出話をするとき、描く輪郭とまったく違っていた。必死に毎日を生きていて、空回りばっかりしているみすぼらしい情けない自分がそこにいた。

いつからだろうか、わたしは余裕のある大人になりたがっている。人を手のひらで躍らせる、みたいな意味じゃないよ。過去も現在も未来もソファーに寝そべって傍観できるような、ひとつひとつの物事に大して動じない人間になりたいと思っていた。

そんなのできるわけないよなあ!できないよ!日記ひとつで巨大な羞恥心に駆られて、しばらくLINEを見ることもできなかった自分は到底理想の自分になれそうにもない。

 

わたしはどこに帰りたいんだろうか、ちょっとだけ考えることにしてみた。もしかして一人暮らししていた頃に戻りたいのか?

いや、ないなー。確かに、一人暮らしは「ここが天国か!」って両手を掲げるほどたのしかったけど、友人も家族もLINEでしかつながっていないこのままでは突然死したとき、腐臭で(会ったこともない)隣人にやっと見つけてもらえるような人生をおくることになる。ほれみろ、最悪じゃないか。

しかも、一人暮らしのときは人と関わることが面倒くさくなってしまって、サクッとした飲み仲間とか、そういう人ばかり求めてしまっていた。とにかく毎日たのしく生きていればいいや、と思っていた。でもそれって、そんなに望ましいことじゃなかったんだよね。7年ぶりに実家に帰ってきたからわかる。

実家に帰ってきてから、毎日声をかける相手がいる生活とともに自分のどこか溶けていた部分が矯正された気がする。毎日顔を合わせていると、お店で面白いものをみつけたとき「あ、これお母さんに見せたいな」と思うようになったりとか。たのしいことばかりじゃないし、ちょっとばかり億劫に感じることもあるけど、わたしは多少強制されたほうがちょうどいいのだ。

たぶんそれは友人関係でも、恋愛関係でも、そうだと思う。わたしは多少の束縛は受けたいタイプだ。残念ながらわたしはよしだくんが大好きなメンヘラではないのだけど、やっぱり強制をされていると必要に感じてもらえている気がして、嬉しくて、勝手に調子に乗って、何かもっているものを全部与えたくなっちゃうよね。だからすべてがうまくいく。相手にうざく思われない限りね。

 

さて、わたしはどこに帰りたいのだろうか。

わたしはこういう結論を出した。「おしりの強度を上げ下げしている自分の姿を想像して泣きたい気持ちになったよ」と言えるような友達がほしいのだ。

わたしはなぜだか、友人環境に恵まれない人生だ。地元では友達ができるどころか避けられる幼少期だったので、千葉県に逃げてみたら男女関係のいざこざに巻き込まれ、名古屋に逃げたら友人がすっかりいなくなってしまった。やっと東京に友達とよべる相手ができて、就職先を東京に・・・と思っていたら、なぜか福岡に配属になってしまった。

LINEでやりとりするような友達はいっぱいいるけれど、やっぱり実際に会って麻雀しながら(できないけど)朝ごはんの目玉焼きがちょっと不格好だったよとか、そういう話がしたいんだ。過去の栄光とか、こういう激しいことがあったとか、美化されるべく脚色をしまくった過去の話をふいにして、まさに今、心を動かしているタイムリーなものを共有できる相手が欲しいのだ。

誰かと『共有したい』という欲は、「決して知ってもらいたいから」というわけではない。共有して、初めて自分のものになることって結構多いんじゃないかな。ぼんやりしていたものを言語にして相手が受け取ったとき、それは初めて出来事として形になるんじゃないかな。

ここまで書いてて気づいたよ。それって、ダーリンのことなんじゃないかって。ダーリンじゃん。わたしはダーリンに帰ることにしよう、そうしよう。壮大なテーマのわりに、ふわっと着地しちゃったね。おつかれ、解散!

“Take me home” への6件の返信

    1. 束縛はしたいとも思わないし、されたいとも思わないですね。
      ただ「されたほうがうまくいくこともあるんじゃないかなー」ってだけです。お互いにまったく束縛をしない関係だと、ふわふわってしちゃいそうじゃない?
      ま、男友達と縁を切れ的な束縛をされたらその人と付き合うのは無理ですけど。

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