連綿と、脈絡なく

今年初めてツバメを見たのはたしか、4月5日のことだったか。犬山にお花見に行った日。良く晴れていて、暖かくて薄着でよかった。
それからまた寒くなって、暖かくなって、寒くなって、雨が降ってまた晴れた。

今、私の目の前をひらひらとツバメによく似た影が羽ばたいていく。コウモリたちが夕焼けの色を残した群青色の空をバックに川の上空の虫を捕まえに来ている。夕食タイムなのだろう。
ふと疑問に思う。コウモリとツバメの食べ物は同じなのだろうか。

夕焼けを写した川面を眺めていたら、今日の講義の映像を思い出した。デトロイトかオハイオのどっちかだったと思う。映像は2010年のラストベルトにおける製造業従事者の失業問題についてのドキュメンタリーだった。街の名前とともに海が映し出されていた。ということは多分オハイオの方かな。
そこを白いかもめが横切る。
カメラマンはかもめが横切るまでじっと待っていたのか。それとも、カメラを構えていたらたまたまかもめが横切ったのか。

そんなことを考えていたら美味しそうな香りが。いつのまにか焼肉屋さんの裏手に差し掛かっていた。
ちょっとの間、自転車を止める。

もしや、はちまき、焼肉を食べたくなったのかい。
ううん、全然。

空がきれい。夕焼けを眺めているうちに、無事に模擬授業を終えた達成感が心の中に広がった。

朝来るときは電車に間に合おうと、立ち止まる暇なんてなかった。ちょっと早めに大学に着いて模擬授業の準備をしたかったんだ。

再び自転車を走らせて、はっと気づくと昨日の会話を思い出していた。
「私、嘔吐恐怖症なんです」

なんだか似たようなことを最近聞いた気がする…。
あ、思い出した!金曜日、友達とインド料理を食べた時だ。
「大学は寒い」と話してたんだ。冬も、夏も、うちの大学は寒いのだ。

あれっ。
「嘔吐恐怖症」と「大学が寒い」、なぜ似ていると思ったんだろう?
ああ、そうか。
もううちのすぐそばまで近づいた頃、ようやく合点がいった。手話で「怖い」と「寒い」は同じ表現になる。

歩いていたり、自転車で走っていたりするときの私の頭の中。
前へと進み続ける体をよそに、思考はひとり歩きを始める。連綿と、脈絡もなく。

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