好きってなに?

困ったことに、私は好きでもないものを好きだと言ってしまえるみたいだ。

「数学は好き?」 好き!
「歴史は好き?」 うん、好き。日本史よりは世界史が好き。
「勉強が好き?」 好きだと思う。今まで知らなかったことを知るって楽しいよね。
「今日の服は好き?」 うん、このオレンジ色を気に入っているよ。ずっと着てるけど色褪せなくてなかなかいい。
「絵を描くことは好き?」 好き。夢中になれる。
「音楽を聴くことは好き?」 まあ、好き。音楽のジャンルにもよるけど、流れていれば聴くよ。
「外に出るのは好き?」 晴れた日に森を歩くのが好き。
「雨の日でも?」 雨上がりの朝が一番好き。

「じゃあ嫌いなことはないの?」
嫌いなことだって、あるよ。

例えば、数学の問題が解けないのが嫌い。覚えるだけの無意味な歴史が嫌い。やりなさいと言われてする勉強が嫌い。
お気に入りのこの服だって、着ているうちにだんだん好きになってきた。お店で選んだ時には好きかどうかなんてわからなかったんだ。
絵を描くことは好きだけど、描く気分ではない時もある。ずっと音楽を聴いていたいわけではない。天気が良くても外に出たくない時はある。雨上がりの朝に、外に出ようとしない自分が嫌い。

頑張っている時の自分は好きだけど、怠けている自分は嫌いなのだ。
でも頑張らない人を嫌いなわけではないよ。むしろやさしい気持ちになる。頑張りたくない時だって、あるよね。
他人が頑張らないのを見ていても全く嫌ではないのは、たぶん、安心できるからだ。私は人より頑張っている。どこか心に余裕を持って、頑張らない人を眺める。

私は自分のことが好きではないのに、好きになるために頑張っている。でも「好き」って、そういうことではないはずだ。

好きってなに????

春も、夏も、秋も、冬も、好き。でも全てを好きなわけじゃない。嫌いなところもある。
暑いのは嫌いだし、寒いのは嫌い。だからといって夏を嫌いになったり、冬を嫌いになったりなんてしないよ。
例えば寒い日、歩いているうちに指先がじんわり温まってくる感覚が好き。暑い日に、トマトを切って食べるのが好き。
嫌なところに目をつぶって、好きだと思い込んでいる。まるで履き心地の悪い靴をごまかしながら履き続けているみたいに。色とデザインは気に入っているから、と。
そういうこと?

好きなところだけを見ようとするのは悪いことなのかな。
だってしょうがないじゃん。靴や服だったら新しいのに買い換えられるかもしれない。でも実際、そうはいかないことの方が多い。
とりわけ自分自身。どうにかしてもっといい人間に変わりたいと思うけれど、それには努力が必要なのだ。自分を好きになるための努力。

「好き」という言葉に表してしまうと途端にわからなくなるね。本当はこんなふうに考え込んだりする必要なんてないのかもしれない。
なにかを好きになるのには、努力や理由なんていらないはずなのに。

例えば、雨上がりの朝に早起きして散歩に出かけること。赤や黄色の楓の葉が、頭の上にひらひらと舞い降りてくること。ひんやり冷たい空気の匂い。とてもいい気分だ。
私は秋が好きだと思う。なにも頑張ったりなんてしなくても、自然と好き。

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