大学2年生の頃、僕は自分の持っている服に限界を感じていた。ほとんどが大学に入学したときに買ったものだった。
その当時、暇さえあれば自転車に乗っていたので服にまったく気を使わなかった。よれよれのジーパンにダボダボのパーカーを着ていることが多かった。
このままではいかん!と思い友達の宮本にこのことを相談した。彼は地元からの友達で大変熱い男だ。僕の話を聞くや否や「俺が何とかしたる!!」と言い、大須観音駅に集合!とだけ伝えてきた。
駅に集合した僕らは近くにある大須観音商店街に向かった。この商店街は古着屋や輸入ショップが立ち並ぶ上級者向けのスポットで、初心者向きとは言い難い。そんなことまったく知らなかった僕は、この場所に自分の求める服がある、そういう気持ちで彼の後をついていった。
道中で彼が僕にどんな服を着たいか聞いてきた。僕は大学の講義に着ていけるような落ち着いた無難な服がいいなと答えた。
宮本が案内したのはアメリカのストリートファッションを専門に扱うショップだった。頭の上にクエスチョンマークが浮かぶ。店の奥ではムキムキのお兄さんが睨みを効かせていた。
「え、あのいきなり攻めすぎじゃないですか?」「あのさ、くぼきさんはストリートファッションが似合うと思うんよね」「はい…?」こんなやり取りをした。僕が店先でごねていた。
結局入るだけならと渋々入店した。一通り店のなかを見てまわり試着もしていった。どうやら僕はLakers(アメリカのバスケチーム)の厳ついジャンパーが似合うらしい。ムキムキのお兄さんがとびきりの笑顔で「ニアウヨ」と言ってくれた。宮本は「俺が着たいぐらいなんだけど」と言っていた。自分のなかではとんでもない違和感があったのだけどこの連携プレーを前に買うしかないという気分になってきた。これで自分は変わったるんやと思った。
このジャンパーの出番は意外に早くやってくる。その日の夜、久しぶりに大学祭の実行委員で飲むことになったのだ。厳ついジャンパーをみにまとい集合場所に到着する。
開口一番「銀行強盗の方ですか?」といわれた。撃沈した。
それからというもの服は自分が納得したものを着ないと駄目だなと思うようになった。もし僕がそのジャンパーを気に入っていたならば「誰が銀行強盗じゃ!」とツッコミをいれていてジャンパーの尊厳を守っていたことだろう。
今、そのジャンパーは宮本が住む部屋のクローゼットの中にある。完全に心が折れた僕は彼にそのジャンパーをあげてしまったのだ。
ちなみに、彼がそのジャンパーを着ている姿を僕は一度も見たことがない。彼に会うたびに「ジャンパー着ないんかい!」と心のなかでツッコミをいれている。
くぼきくんの可愛さが溢れている
いや~編集のおかげです
悲壮感に味をしめたくぼき
これが俺の文体や!
くぼきさんこんな文章書けたんだ、っていうのとこんな風に普段考えてたんだ、っていうのが分かってすごい新鮮です。応援してます。
嬉しい!
書くモチベーション上がるな~