臨機応変

今日は手話ランチの日じゃん。電車が動き出した時、パソコンを忘れたことに気がついた。スマホも見当たらない。

毎週金曜日お昼休み、大学で手話ランチをやっている。「みんなの手話」の動画を見て手話表現を覚え、おしゃべりしながら練習する。

ところが忘れてきちゃった、パソコン。動画見れない。どうしよう。
電車が次に止まるのは20分後。うちに取りに戻っていたら2限を犠牲にすることになる。

今日は動画はなしでやるか!

決断して、はっと閃いた。
去年ななこがろう学生の交流企画で「白雪姫」のジェスチャーをやっていた。ななこは、というかななこに限らずろうであれば、実にレベルの高いジェスチャーをできる。言葉なしに物語を作れてしまうような。
事実、ななこの白雪姫のジェスチャーに私は思わず見とれていたんだよね。

あれみたいなのができないかな!私にも?

今日の手話ランチの流れを頭の中でおさらいした。「お好み焼き」と「わさび」をジェスチャーで表現してみよう。声はなしで。

本当は鏡の前で30回くらい練習してみたかったけど、そんな余裕はなかった。代わりに頭の中でイメトレした。声に頼らずどうやって進めるかを。

将来教師になったら、毎回の授業をこうやって組み立てるんだろうなと思う。できるかどうかわかんない、ではなくて、できるさ!と自分を信じてみる。ジェスチャーでも、英語でもロシア語でも、なんだってそうだけど、伝わるコツは自信たっぷりにやってみせること。

結果はどうだというと、嬉しいことに伝わったみたい。「おこのみやき」と後ろの方で指文字が見える。

普段の手話ランチは声をつけてやっている。動画も「難聴者・中途失聴者のためのみんなの手話」だから日本手話ではなくて対応手話。
今日の声無しの手話ランチで、ろうの世界を、少しでも感じてくれたのならいいなって思う。
まったく手話初めて!っていう子たちが、毎回来てくれて少しずつ少しずつ手話を覚えていくのを見るにつけ、なんとも嬉しい気持ちだ。

手話を話すろう者に私は憧れていた。手話やジェスチャーは彼らの周りに音のない世界を生み出す。まるで魔法のように。
しかし今日私は気づいたんだ。音のない世界はいつだってそこにあるのだということに。

だいじょうぶだ。

聞こえなくて、わからなくて、いやになる時はいつでも帰ってこればいい。音のない世界はいつでも心地よく、迎え入れてくれるから。

ジェスチャーをもっと磨きたいな。
今回伝わったのは成功だったと言える。けれどもそこで満足するようなはちまきではない。

例えば今日の「お好み焼き」。
以前はよく父が、目の前で作ってくれたものだった。ひっくり返す前に、「焼けてるかな」ってちょっと下側を確認してたなぁ。あれを参考にもっとリアルに表現できるはずだ。

わさびも。今回はお寿司についてるわさびをジェスチャーしてみた。しかし最後、わからなかったのだよね。わさびを食べてつーんってなった顔、どうやって表現したらいいんだろう。今度食べてみよっか。苦手だけど。

そして、日頃から観察してみよう。良き教師とは日常の中から授業の材料を見つけ出すものだ。

余談。家に帰ろうとして鍵を忘れたことに気づいた。なんて忘れ物の多い日だろう。

私、大丈夫かな。教師になれるのか心配だ。

“臨機応変” への2件の返信

  1. 白雪姫なっつかしい笑
    音があったりなかったり両方の世界をちょっと覗けるはちまきが羨ましいなあとおもうよ。きっとそういうグレーゾーンならではの葛藤とか悩みとかもあるんだろうけど。あ、てかそういう暗い話ないの?聞きたーい笑

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