センス

今朝写真見て、すごいなあって思ったよ。布巾の写り込み具合といい、流し台の角度といい、狙ってたでしょ?プロの腕ってすごい。感心したな。なんでもない100均のお皿がびっくりするほどきれいに見える。

「適当に撮っただけだよ」
彼女は笑って言う。
だからすごいんじゃん。

「センスがいるよね」
まだ会って間もない時のことだ。写真を撮るコツってあるの?と尋ねた私に、彼女はそう答えたのだった。
センスだなんて言われても、どうしたらいい?自分にセンスがあるのかないのか、私にはよくわからない。どうやってセンスを磨いたものか、見当もつかない。

これがセンスだ。
1枚のお皿の写真が私に突きつけた。
それを、どうやって説明したものか悩んじゃうな。でも何かがあるんだ。布巾と流し台の角度に。あるいは、お皿の表面で反射する光に。
彼女には私にはないセンスがある。並べるセンス。

ところで彼女は写真だけでなく、絵もすばらしい。
ある時地球の絵を描いて見せてくれた。
青い海にやさしい曲線で描かれた陸を並べた地球。その真ん中に筆記体で描かれた文字。Beautiful。
彼女の絵や写真はどれもバランスがいい。一つ一つの形がうまく収まっている。完璧だ。
「花は想像で描いたんだ」と彼女は言う。「コロナウイルスで暗いニュースばかりだから、明るい世界を描いてみたかった」
彼女の内側から光っているみたいな明るさが、私には不思議だった。

この前思いついて、ポケモンを描いてみたんだ。画像を見ながら真似して描いた。初めのうちはラクショー!って思った。線と色と影。ポケモンって単純だ。
ところが私は自分の描いた絵が気に入らなかった。子どもの頃大好きだったポケモンが、いま色褪せて見える。なぜ?

どんなに細かく色鉛筆で現実をなぞっても、現実そのままを描くことなんてできない。私が描けるのは私の目にどう映るか。どうせ、描きたいようにしか絵にならない。
でもそんなの描いている時には見えないんだ。描き終わって1歩、2歩、3歩、下がってからやっとわかる。あ、こんな風に描きたかったのか。

完成した直後の絵はどれも、なんだか物足りなく見えるものだ。
もう一度ポケモンの絵を見る。
どうかな、これがセンスだ。

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