1年前の雪の日

昨日、雪が降っていた。

私は真っ暗な道を歩いてバイト先へ向かった。いつもは自転車で10分の道のりだけど、歩いて行くと20分。余裕を持って家を出た。

夜が明けきらない時間帯。空気は冷たく、冬の香りに満ちている。
ひらひらと、白いかけらは傘の下にも入り込んできた。雪の動きを目で追っている間、その時だけ、時間がゆっくりになる気がする。

日本の雪は苦手だ。寒いから。

バイトの間、外を時々眺めた。真っ暗だった空はだんだん明るくなっていく。目を凝らすと雪がまだ降り続いていた。
フロントガラスにたっぷり雪を乗せた車が駐車場に並んでいる。

そういえば去年、雪の中を運転しようとして怖い思いをしたなぁ。
「去年、雪で動けなくなったでしょ」
昨日たまたま一緒だったパートの方もちょうど同じことを思い出していたみたい。ふたりして顔を見合わせた。

あの日は夕方からの勤務だった。
家を出る時はまだ雪が降っていなかったんだ。風が強くてとても寒かったから、車で行こうと思い立った。それが過ちだったと後になって知る。

途中から降り始めた雪は、バイトを終え帰る頃には道路をうっすら覆うまでになっていた。

「車は危ないから、置いて帰った方がいいよ」と母からLINEがあった。

えっ危ないの??ほんのちょっと積もってるだけじゃん。

ロシアでは凍った雪の上をみんな普通に運転する。バスも走っている。
実際ロシアで運転したことはないんだけど、気をつけて運転すればきっと大丈夫だ。

私は雪をなめていた。
結果、めっちゃ怖い思いをした。

車をそーっと道路へ向かわせたものの、ハンドルがきかない。
お店に戻って、助けを求めた。それがさっきのパートの方。

たいした事故もなくあの日家に帰ってこられたのは本当にラッキーだった。幸運に感謝している。

帰ってから父にこってり絞られた。
「ちゃんとお母さんの言うことを聞きなさい」

心配していたからこそあんなに怒っていたのだと思う。
もしも大切な人がスタッドレスタイヤなしで雪の中を運転しようとしたら、私だって全力で止める、
そうだね。

でもあの時は、子ども扱いされたことがただただ悔しくって、父のいないところで泣いた。
私 実はプライド高い。

寒さとともに身にしみる、苦い思い出。

一つ賢くなった。
もうぜったい雪の日に運転しない。

雪はきれい。そして怖い。

“1年前の雪の日” への2件の返信

  1. 雪はこわいねえ、名古屋に住んでいた時、家の前の道路が完全に凍結していて家に帰れない怖い思いをしたのを思い出しました。

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