たなかの唐揚げ定食

どうにも自炊をする気が起きなかったので近所にある定食屋で食べることにした。定食屋の名前はTANAKAという。カウンター席しかないお店で、無口な店長と愛想のいい奥さんの二人できりもりしている。この手の定食屋にはずれはない。間違いない。

メニュー:唐揚げ定食

お店の中はおかずの匂いが混じりあい、よくわからんが美味しそうな匂いが充満していた。僕は唐揚げ定食を注文した。

 

ここの唐揚げは多分採算を度外視している。一個一個がはちゃめちゃに大きい。スーパーで売っている鶏もも肉を想像してほしい。あのトレーに入っているやつだ。あれが丸ごと唐揚げになっている。しかもそれが三つ出てくる。毎回、この大きさが三つも…!!と嬉しい気分になる。

唐揚げ定食が運ばれてきた。先に汁物を食べてからおかずに行きたいのだけども、熱いうえに具材がとんでもなく大きいので毎回断念してしまう。一口で食べることを前提にしていない大根、ニンジン、レンコン…。店長はここでも採算を度外視している。熱い漢気が伝わってくる。

実は店長の顔をあまりよく見たことがない。店長は壁に向かって黙々と料理を作り続けている。背中で「俺は採算を度外視しているぜ…」と語りかけてきているきがする。

 

口の中をやけどしそうになるぐらいの熱々の唐揚げを頬張る。衣はカリカリだった。中からは肉汁があふれてきた。これだけ肉厚なのに中まで味が染みているのはきっと店主の努力なんだろうな…と勝手に想像してしまう。味はどこか甘目なのだけどあらびきの胡椒がいいアクセントになっていて上手くバランスが取れている。当然だけどご飯がすすむ。三つ目の唐揚げを食べるころにはご飯はなくなっていた。

ここで一息つきたいところだけど、このままだと満腹中枢が刺激されてもう何も食べられなくなる、そう感じた僕は汁物に手を付けた。まだ熱々の具材を食べていく。おそらく何時間も煮込まれた大根はこれでもかというぐらい味が染みていた。何とか満腹中枢が刺激される前に完食した。

最後に熱いお茶を飲みほした。油物の後に冷たい水を飲むと消化によくないらしい。店長はなにからなにまでわかっている。最初から最後まで満足な晩御飯だった。

 

帰り道、お腹がはちきれそうな僕は、自転車からおりて音楽を聴きながら帰宅した。

 

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