–彼は愛を残してもらったらしい。
間違いだらけの世界から、
君は先に居なくなった。
「いい子だね」と言われ育った、
周りの褒め言葉から僕は生まれた。
何不自由無い暮らしと才能に恵まれ、
僕というものは退屈を覚えた。
雨宿り駄菓子屋、軒先の水溜まり。
自分を踏んで遊ぶ君に出会った。
そんな梅雨の季節。
紫陽花は咲き乱れ、牡丹色から若紫へ。
「涙は弱いアルカリ性なの知ってた?」
君は笑う。ただ笑う。見上げ空に浮かぶ雲。
夏の始まり。
「蝉はぼくにとてもよく似ているよ」
君は言った。
「どんな風に似ているの?」
僕は問いた。
「蝉は7日間で愛を探すらしい」
「ぼくは7ヶ月間で愛を探してるんだ」
漆黒に染まった天井を飾る花弁は、
君よりも蝉よりも命はとても短くて
でも他の何よりも煌めいていたよ。
君と見る百越す散る花弁、響く爆音。
秋が、来る。
若緑はやがて芥子色と栗色と焦茶に
僕はやがて君という存在と君の愛とかに
染まってく。
「ぼくは愛を見つけても見つけなくても」
「7ヶ月間しかない。仕方が無いよ」
お願い神様、どんな理不尽も不条理も、
受け入れてみせるから。
君だけは。居なくならないで。
ふと涙は弱いアルカリ性を思い出した。
煤色になった欠片を寄せ集めて、
猩々緋の種を付けましょう。
種は育ち、深緋の花になり、やがて散る。
鮮やかなものは銀色に埋もれた。
間違いだらけの世界から、
君は先に居なくなった。
跡に残るは胸に残るは
君がくれたこの愛だけ。
季節は巡り、寄らなくなった駄菓子屋。
軒先の水溜まり、ふと思い出す遊び。
自分を踏んで自分を否定してそうして、
君だったものは自由に生きていたね。
雨なのか涙なのか僕もわからなくて
「涙は弱いアルカリ性なの知ってた?」
「アルカリ性で紫陽花は紫になるよ!」
紫陽花は咲き乱れ、牡丹色から若紫へ。
また夏は始まる。
これがいちばんすき
ありがとうやった。
しって
わからんね
なにか打ってる途中だったの?
階段島シリーズを思い出した