10日前の記憶

5月7日。
その日私は何をしていたっけ。

火曜日だから普段通り学校へ行ったはずだ。
時間ぎりぎりに2限目の教室に滑り込んで講義が始まった。なかなか頭が集中していかなかった。ゴールデンウィーク明けだったからかな。

学科の友達と一緒にお昼を食べた。彼女はおにぎりと黒豆を食べていて、私はゆかりごはんと大豆のサラダだった。

4限目、模擬授業で生徒役になった時、先生に当てられたのを覚えている。確か、TorF(○×問題)の答えあわせだった。Fと答えた私に先生が質問する。“Why is it false?”
あ、思い出した。その時ナマケモノについての話を読んでいたんだ。

10日前。はっきりと覚えている部分もあれば、ぼんやりとしか思い出せない部分もある。

人の記憶はどのようにして失われていくのだろう。思い出さないでいるうちにいつの間にか薄れて消えて行ってしまうのだろうか。

5月7日がなぜ問題なのかというと、おそらくその日から私の左足の違和感が始まったと推測されるからだ。

ここ最近、左足首が変な感じだ。
土曜日にテニスをしたせいではない。筋肉痛とは違う。その前から違和感があった。

先週の水曜日、つまり5月8日、私はスーツを着てパンプスを履いて説明会に行った。
「足痛いの?」
家に帰って母に聞かれた記憶がある。私が足をぐりぐり回していたから。
「パンプスが痛いのかな」
と私は言ったけど、それが原因ではないような気がしていた。その前日から痛かったからだ。

その後にも2回スーツを着ないといけなくて、けれど普通にパンプスで歩き回っていた。歩いたり走ったりする分には問題ない。階段を登るのもジョギングもいつも通りだ。はれてる感じも全然ない。
普段はすっかり忘れてしまっているのに、足首をある角度に曲げた時、ちょっと痛いなぁと感じる。

5月7日、足をひねった記憶はないので、結局何が原因でそうなったのかはわからない。あざの跡が薄れて消えるように、知らないうちに治ってしまうと思うけど。

火曜日は、月曜日と水曜日の間におさまっている。今週の火曜日の背後には、先週の火曜日が。5月7日のきっちり1ヶ月前には、4月7日が。
隙間なく繋がる毎日を、どこまでもたどっていけそうな気がするのに、記憶の幾らかはところどころ失われてしまっている。いつか足の痛みが消えてしまっても、日付は変わることなく過ぎ去った日々を指し示す。たとえなんでもない、大豆サラダとナマケモノの一日であってもね。

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