泥だんごを作って差し出すと、その子はそれを手にとってぽんと投げた。
ぽちゃん。
あああー、せっかく作ったおだんごが!!
一瞬前までだんごの形をしていた塊は水の中でパッと広がり、バケツの底に沈んでいた。
私はびっくりして、どうしたらいいかわからなかった。
まさか、泥だんごをバケツの水に放り投げるなんて思わなかったし、水に落ちた泥だんごがあんな風に一瞬で解けるものとは知らなかった。
そして、その水は他の子が汲んできたものだった。そこに泥を入れたらきっと、怒られちゃうんじゃないかなぁ。
おろおろ。
困ったようにバケツの水と子どもたちを見つめる私。
その時だった。
一人の男の子が泥の沈んだバケツの水をひっくり返した。それから空になったバケツを持って水道に向かい、新しく水を汲み直してきた。怒るわけでもなく、当たり前のことのように。
私より、この子の方がよっぽど大人じゃないか。
どうやら私は、子どもの前で、大人でいないといけないと、そう思ってしまっていたみたい。
でもそんなの、本当の大人じゃない。自信のない大人なんかかっこ悪いだけだ。
そうなんだ。いつも私は人の顔色を伺って生きている。だから時々、どうしたらいいのかわからなくなる。
間違えてもいいから、自分の心を信じたらいい。
思ったままに、「きれいだね」と、水に広がる泥だんごをあの子と一緒に喜んだり、
文句一つも言わずに水を汲み直してくるのを見て、「尊敬するよ」と思ったままを伝えたり、
そんな大人になろう。