毛皮を着たい

「ねえ、私の黒い上着知らない?」
「しらなーい」
レモンに聞いても知るわけないか。

見つけてくれたのは母だった。
座布団の下からカーディガンはくしゃくしゃになった状態で出てきた。昨日父がこの上に座っていた記憶がある。

しわしわの服にアイロンを当てた。ついでにコロコロもかける。黒い布地に、クリーム色の毛がたくさん。さてはレモンもこの上で寝ていたのか。

教訓。服をそこらへんにほったらかしにしないこと。

アイロンをかけているうちに背中の部分に毛玉を見つけた。それはコロコロでは取れない。
……新しい服買いに行こうかな。

なんで毎日服を着るのだろう。人間も毛皮だったら楽なのにね。
「あついよ」
ぐたっと床に寝転がったレモンは、そう言っているような顔だった。

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