砕けるのが難しい

「私、自信なくなってきました」
「どうして?」
「砕けられないんです」

自分がひどく場違いなことを言っているとわかっていた。言う相手と場所を間違えた。こんなこと、全然話すつもりなかったのに。

先生は、思いがけず吐き出されたその弱音を、受け止めてくれた。
「砕けられなくてもいいんじゃないの」
ちょっと距離があった方が、生徒とは程よい関係でいられる。誰が何を言ったとしても、無理して砕けようなんて思わなくてもいいよ。

私は黙って聞いていた。全てを話したい気持ちにかられたけれど、言葉は胸の中につかえたまま出てこない。
そんな私に、先生は神様みたいな笑顔を向けてくれた。

弱音を口に出すのは難しい。自分が悩んでいることを認めてしまうことになるから。黙ったまま、何が苦しいのかさえよくわからないまま過ごしていたこの数日。
そろそろ認めてしまえ。

砕けることが難しい。

仲いい友達も私のことを「ちゃん」付けで呼ぶ。見えない距離がそこにはある。

きっとその距離をもっと縮めて欲しいのだろう。だから、
「もっと砕けてほしい」
「もっと楽な言葉でいいんだよ」
そう言ってくれる。

砕けようとするほどに、私の言葉はなぜか、固く重くなっていく。こんな風に言いたいんじゃないのに。もっと軽く話したいのに。

本当に、どうしたらいいのかわからないんだ。

どうしてだろう。そんなに頑なになってしまうのは。
「自分らしくない」
と否定してしまっているのか。砕けようとすると自分でなくなってしまうような、気がする。

今は岩みたいにぎゅっと固くなっているような私の心。でも本当は砕けて、冗談を言い合いたい。
ものすごく時間かかるかもしれないけど、砕けるのを手伝ってくれるかな。
そう、名前で呼んでくれるのが、私すごく嬉しいんだよ。

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