お酒を自分のために買うのは初めてかもしれない。バイト帰り、ハイボールを買って帰る。
無事買えたということは、20歳以上に見られていたというわけだね。よかったな。
数年前、私が初めて飲んだのは、カンボジアのアンコール・ビール。
日がくれた後、海べりに突き出た桟橋で、あかりを囲みながらカンボジア人と日本人の若者たちが、少しも冷えていない缶を開けて乾杯した。
甘ったるい香りが記憶に残っている。
留学中にも色々飲んだ。ウォッカや自家製ワイン。
「若い人たちに本当に良いものの味を教えてあげるのが、大人の役目なんだよ」
と言って、大学の先生がブランデーをご馳走してくれた。きっといいお酒なんだろうけど、私はあまり美味しいと思えなかった。
それでも、その時私は学んだんだ。本当にいいものをけちけちしない大人は、とてもかっこいい。
海外の話ばかりになってしまうのはなんでかな。
たぶん、ここ2年くらいの間に、好きなもの、嫌いなものがちょっとずつ変わったんだ。お酒は苦手だ、飲まないと、いつともなしに避けるようになったと思う。
酔う時の感覚があまり好きではない。体がぽかぽかしてきて、脈拍がどきどきする。そして、眠くなる。眠くなる。眠くなる。
何より我慢できないのは、肌が痒くなること。アルコールアレルギーなのか、蕁麻疹か。
飲むとしても、1杯で十分だ。それ以上は飲みたいとは思わないよ。
今日のハイボールはいいやつだ。チューハイみたいに甘くなくて、ビールみたいに苦くなくて。
蕁麻疹もいまのところは影を潜めている。
ああやっと、
私にもお酒の味がわかってきたのかな。