孤独死フラグ

引越しをしました。

猫洞通りのシェアハウス。
私の他に入居者はいない。まだオープンしたばかりだから。
炊飯器も掃除機も、共用の物は何もかも新しい。大事に使おう。

最初の日は炊飯器の使い方と、お風呂のスイッチの使い方を覚えた。ご飯を炊き、味噌汁を作り、お風呂に入った。
次の日は掃除をした。部屋の隅から隅まで、掃除機をかけた。
明日は洗濯をしよう。お昼ごはんには、そうだな、きゅうりと卵焼きのサンドイッチを作ろう。

ていねいに暮らそうという気持ちになるのは、共用のものだからという以上に、手作りの物たちに囲まれているせいかもしれない。

とってもおしゃれな部屋なんだ!
部屋の明かり、木の机、引き戸。一つ一つ手作りされている。センスあるなあ…。
極めつきはドライフラワー。枯れた花を飾って何がいいんだろう、と思っていたこれまでの自分を深く反省しました…。
「安いけどね」
と部屋のオーナーさんは言う。
でも、お金で決まるような価値じゃないよ!人の心をつかむ何かがある。

まだニスの匂いが残る部屋で、窓を開け、私は荷物を片付けた。
ほとんどは実家で使っていたものを持ってきた。けれどもベッドカバーだけは新しい。
曽祖母の寝巻きにも、歌舞伎役者の練習用の浴衣にもなり得なかった反物が、今私の体の下にベッドカバーとして敷かれている。
母曰く、「ひーばーちゃんが寝る時の浴衣にするつもりで買ったらしいけど、結局作らなかった」
白地の反物には、鎖のように四角い模様が連なっている。「吉原つなぎ」と呼ばれる柄だそうだ。

「歌舞伎役者は、こういう柄の浴衣を着て練習するんだって」
という母の説明を聞きながら、ミシンでダーっと縫った。使えるものは大事に使おう。

「私、ちゃんと生きていけるかなあ」
机の上のドライフラワーに話しかけた。
明かりの効果か、夜になると部屋中セピア色に見える。その中に私は自分の将来を見た気がしたんだ。

このまま何もしなければ、私の最期は十中八九、孤独死だと思う。
結婚せず、家族もいなくなり、身寄りのないまま歳をとったら?誰にも看取られないまま、ある日、部屋の一室でミイラになっているのを発見される……。
将来を悲観しすぎてる?
かもしれない。でも現実、十分孤独な生き方をしてきた気がするんだよね。

気の合うルームメイトが来てくれるといいなあと待っています。

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