If my sister were older than me…

「前に家族で、ナゴヤドームに行ったよね。レモンも一緒だった」懐かしそうに、妹は言った。「楽しかったな」

私の記憶の中で思い出はずいぶんおぼろげだ。わんにゃんドームのイベントだったと思う。
車を停めるところがなかなか見つからず、近所の民家の庭先に停めさせてもらったのをなんとなく覚えてる。父が運転していたはずだ。

いま私は、妹の運転する車に乗っている。ナゴヤドームのイオンで買い物した帰りだ。(妹はカエルになってしまったわけではもちろんなく、すらりと背の高い美人のままだった)
まだ初心者マークなのに、妹は実に上手に運転する。
「運転は好き」
と言う妹の運転はとても穏やかで、ずっと助手席に座っていたいような気持ちにさせる。

妹に会うのは3ヶ月ぶりだ。
私と妹は全然似ていない。3つ下の妹と並ぶと、私の方が年下に見えるかもしれない。いつの頃か忘れたけど、身長を追い越されていた。
小さい頃から才能に溢れた子だった。なんでも器用にこなす。それに、すっごい美人だ。
妹は昔、学校の先生になりたいという夢を持っていた。今は別の道を進んでいる。
私は昔、学校の先生になるなんてまっぴらだと思っていた。
妹と私の人生は、ひょっとしたら何か取り違えてしまったんじゃないかって、そんなことをふと思う。本当は私が妹で、妹が私の姉で…。

新しい住まいのこと、仕事のこと、実家を出ていくと決めた経緯。私がしゃべりまくるのを妹はひたすら聞いていてくれた。
それがなんだか、私には変な感じだった。なにがって、こんな風に妹に全て打ち明けられることが。妹が、まるで普段の私みたいに、ゆっくり言葉を返していることが。
もともと一緒にいてもあまり会話をしない間柄だったから、どうして突然私がおしゃべりになってしまったのか、妹は驚いたんじゃないかと思う。そういう私が一番びっくりしていたのだけど。

「わけわかんなーい!」
と私は言った。くそったれ、と言うのでもよかった。要するに、父に対する怒りを吐き出した。
「お父さんも繊細なところあるよねえ。それでも、ストレスを家族にぶつけるのはどうかと思うけど」
妹は、マリア様のような慈愛にあふれた穏やかさで受け止めた。

ええっ、なんで?
どうしてそんな風に笑っていられるの?

ともあれ、私の心の闇は晴れた。
父の何を許せないと思っていたのかというと、妹に対する仕打ちだったから。鬱になった妹を責めるようなことを言った。言ったらいけないことを。
でも妹が父のことをなんとも思っていないのなら、もういいんだ。
何年も前、家族でナゴヤドームに出かけた時の思い出を、いま幸せに思い出せるのなら。

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