部屋の壁に貼った絵やメモ書きを、1時間かけて全て剥がした。壁紙は案外無事だった。午後からアパート退去前の立会点検がある予定になっていた。特に部屋のどこかを壊したり汚したりもしていなかったので、点検は問題なく終わった。

問題は、この白くなった壁だ。
真っ白になってしまった壁を見ているのは、なんとなく嫌だ。退去日まではまだ暫くあるので、やはりわたしは、この城の修復に取り掛からねばならないと思う。

妙な、けれど頑固なこだわりばかりあって、時々自分で自分を不自由にしている感覚がある。こだわりというか、強迫観念と言うべきかもしれない。「なんとなく、」という勘、あるいは幻想が、わたしのあまりに多くを支配してしまっている。くまの子ウーフが、「ウーフはウーフでできている」と子どもながらに気付いたように、わたしは、わたしが見えない顎に砕かれる夢でできていることを大人ながらに発見したのだ。でも、同じことだと思う。変えられないものを宥めたり賺したりして、付き合っていくしかないのだと思う。

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