もう一本腕がほしい

コンビニのレジ袋はびっくりするくらい広がる。
たとえばSSだったらペットボトル3本、Sだったら食パン一斤。食パンと他に何か一緒に入れるときはMの袋がいい。あんまりぎゅうぎゅう詰めるとパンがつぶれちゃうからね。

レジに出された商品を見て、どの袋がちょうどいいかを瞬時に的確に判断する。今ではもう考えることなくできてしまう。
私の手はどう動いたらバーコードをすばやく読み取れるか知っている。私の指はどう動いたら硬貨をきれいにまとめられるかを知っている。
それはもうすでに、身に染み込んだ感覚となっている。

コンビニのレジは同じことの繰り返しだけど、私にとってそんなに苦でもない。うまく動けるということが単純にうれしいんだ。

お客さんにとってコンビニでのお会計の時間は人生のうち、ほんの瞬きする間。あまりにもさらっと過ぎて、後にはほとんど何も残らない。
そういうものだと思うよ。

でも何時間でもレジに立つ私はその時間をちゃんと味わいたい。いろんな人がコンビニにやって来ては通り過ぎていくのを眺めながら。

たとえば、
お弁当を買いに来たバスの車掌さんがかっこいい帽子をかぶっていたこと。
ちっちゃい子がお菓子を欲しがって泣いていた。
お金を置くなりタバコをひったくるように行ってしまう人。
出来合いのお惣菜を買っていく仕事帰りの疲れた感じのお母さん。温めはなしで。

同じことの繰り返し。
そうとも言えるけどそうでもない。

来るお客さんは一人一人違う。
急いでいる顔。
風邪でつらそうな顔。
目線を合わせるのが苦手な人。
ノリの良さそうな人。
小銭がなかなか見つからなくて探し回る人。
電話中、もしくは別のことに気を取られている風。
常連さん。

私は1回1回、相手に合わせて少しずつ微妙に対応を変える。
速くしたり、丁寧に袋詰めしたり、言葉づかいをくだけてみたり、みたいにね。

もっと上手くレジをできるようになりたいなぁ。

コンビニでバイトを始めた時からその気持ちは全く変わらない。レベルアップには上限がないと思う。

まだまだ足りない部分もある。
雰囲気を読み取る力。
相手に合わせる力。
それだけでなくて、しっかり自分を守ることも大事だと教わった。
どんなに忙しくても自分のペースを守って落ち着いて対応する。もう一本腕がほしいと思うことはあるけど、自分の腕は2本しかないのだ。これ以上急げと言われたって無理なものは無理。
時には、聞こえないことを相手に伝えて理解を求めることも。

修行あるのみ、だね!

あと残り1年間。
1回1回を大切にしていきたい。自分を成長させるチャンスであると思うから。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。