先入観を捨てよう

ばーちゃんの目はよく見えない。去年白内障の手術をして、だいぶ見えるようになったと言っているけれど、やっぱり見えにくいみたい。

きくちゃんの誕生日プレゼントに、ピアスを選んだ。お店にずらりと並んだアクセサリーを、ばーちゃんはよく見えない。
はじめのうちは、なぜそんなにも見えていないのか、私は不思議でしょうがなかった。けれども、私が声で説明すると、一つ一つのピアスがばーちゃんに見えるようになる。

ここらへんはピアスじゃなくてイヤリングだよ。
さっき見てたのは、これ。
8月の誕生石はこっち。ペリドット。
これは1300円。
これかわいい。パズルのピースの形してるよ。

ばーちゃんの目が見えないのは、私が聞こえないのと似ている、と気がついた。
周りで鳴っているたくさんの音を、私の耳は上手く捉えられない。でも誰かがそばで、あれはコーヒーマシンの音だ、時計の音だ、迷子のアナウンスだ、と説明してくれたらわかるようになる。

ばーちゃんは、見えないなりに見ている。
私は、聞こえないなりに聞いている。
けれども、聞こえる人、聞こえない人に比べられて、「聞こえていない」「見えていない」と責められる。

先入観を捨てよう。相手も自分と同じように見えたり聞こえたりしているなんて、思い込んでしまわないで。

相手が見えなかったり聞こえなかったりすると残念に思うのは、同じものを感じたいから?
本当だったら、見える人、聞こえない人の方が、見えない人や聞こえない人に配慮するべきだよ。できないことを責めるのではなくて。

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