現実逃避

外はとっても暑いんだ。あと少しで40度に届くというところ。
そんな日には家で座って、ソルジェニツィンの本を読もう。

シューホフはその乳色の白っぽい管を、密かな期待をもってチラッと横目で眺めた。零下41度を示していれば、作業に追いたてられずにすむことになっているからだ。

なにか腑に落ちるものがあった。マイナス40度も、プラス40度も、人間には耐えられないんだな。
Обо плюс 40 и минус 40 людей убивают.

ラーゲリもない。強制労働もない。酷暑の日本の家。
『イワン・デニーソヴィチの一日』は、あまりにもこの現実とかけ離れている。
それなのに、リアルに思い描けてしまう、мороз 極寒。食べたことのないはずのラーゲリのパンとスープさえも、どこか懐かしく感じるのはなぜだろう。

帰りたいよ。 シベリアの、あのмороз 極寒の中へ。日本の暑さにはもううんざりなんだ。
でももし実際に、私がシューホフだったらこう思うんだろうな。この極寒から逃げ出したい、と。

ああ、そうか。
私が本を読むのが好きなのは、ここではない、どこか別の場所に逃れることができるから。
生きるために理想の場所なんて、本を読んでいる瞬間にしか存在しないのだと気がついた。

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