昔のように

「お盆だから」
そう言って、巻き寿司のパックをばーちゃんは買い物袋に入れた。
またそうやって、孫を甘やかそうとするのか。いつもなら不服に思うはずだけど、今日の私は割合あっさりそれを受け入れた。

台風が近づくとばーちゃんの体はだるくなる。
何かおいしいものを食べたら元気出るかな。

ばーちゃんは居間で、じーちゃんは洋間でそれぞれテレビを眺めている。映るのは同じ台風情報。
「毎日朝から晩までずーっと一緒にいると気が変になるから、別々の方がいいんだって」と母が言っていた。

私は遠慮も何もなく、ばーちゃんの隣で試験勉強をし、じーちゃんの横でピアノを弾く。
一応ピアノの音は小さくしていた。テレビの声と外の風の音にかき消されてほとんど聞こえないけれど、もうすでに音楽は耳についているから問題ない。勘で弾いてしまう。

ばーちゃんに英語のスピーキングの練習相手になってもらった。英語はわからないけど、私が話すのを聞いていてくれた。
小学校の頃、音読の宿題をこうやって聞いてもらったのを思い出すな。夏休みの宿題も。この同じちゃぶ台でやっていたっけ。

夜ごはんの時間。テーブルに並ぶのは、買ってきた寿司と、カマスの開き、味噌とチーズの焼きなす、味噌汁。
「今日はビール?珍しいね」私が言うと、いつもの焼酎がないからなんだって。
「飲むかい?」とじーちゃんが勧めるビールは断って、梅酒をもらった。3人で乾杯する。

ばーちゃんは、きっと寂しかったのかもしれない。4人の孫のうち私以外はお盆に顔も見せない。
妹と従兄弟の不在を埋めるかのように、私はたくさんしゃべった。昨日行ったリトルワールドのこと。明日の予定。来週の試験のこと。

それから、仏さんにお経をあげた。
提灯に明かりがともる。お盆だね。

大人になってから、家族と過ごす幸せを忘れかけていた。「いらない」と突っぱねて、親や祖父母から距離を置こうとしてきたから。子ども扱いされたくなかったから。
でも、子ども扱いされるのも悪くないなぁ。ピアノの送り迎えをしてもらったり、音読を聞いてもらったりしていたのを思い出す。
もっと甘えておけばよかったんだ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。