夜空の鳥

さんぽにいってきます、さがさないでください。

雷に気づいたのは、田んぼ道に差し掛かった時だった。記者会見か撮影会みたいに、ひっきりなしに北の空がピカピカ光っている。
少しでも風を感じたくて私は歩みを速めた。雨が心配だったわけではない。むしろ、降りだしてしまえばいい。そしたら幾分か涼しくなるはずだ。

雷雲を背景に、それよりももっと濃い色をした翼の影が横切る。カラスやカモとは違う優雅な羽ばたき。サギだろうか。
私が見つめるうちにサギは雲の中に隠れて見えなくなってしまった。

こんな暗い空を、鳥が飛んでいるのが不思議だった。断続的な稲光はあまり頼りになるとは思えない。
鳥って、夜は目が見えないんじゃなかったの?

その2日前にも、雨が降る中、電線に止まるカラスの群れを見かけた。真っ黒なカラスが14羽くらい。
すでにとっぷり日は暮れて、コウモリたちの天下であるというのに、カラスは寝ぐらに帰らない。じっと翼をたたんで雨に濡れている。

街の灯りがあまりに明るいから、鳥たちは夜の空をも飛び回るようになってしまったのか。
昼間の太陽の下はあまりにも暑すぎて、ついに鳥たちも夜行性とならざるを得なくなったのか。
あるいはただ単に、雨のシャワーを浴びたい気分なだけだったりしてね、あのカラスたち。

結局、家に帰り着くまでに雨の一粒も降らなかった。雷がピカピカ光るばかり。歩けども、むし暑い空気からは逃れられない。

私が走り出さないのは、左足の調子がまだ戻らないから。鳥たちが突然夜行性になった理由は知らないけど、彼らなりに事情があるのだろう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。