半関心

『アヒルと鴨のコインロッカー』に出てくる河崎は、片っ端から女性に声をかけてホテルに連れて行こうとする。それを生きがいとしている、変わった人物だ。
誰かれ構わずセックスに誘いたいなんて決して理解できないだろう、そう思っていた。

今日私は言われた。
「笑顔がすてきだね」と、手話で、初対面の人から。
「受付のお姉さんたち、あなたが来るとみんな嬉しい」

人から褒められるのって嬉しいんだなあ。
もっと、周りの人のいいところを見つけられるようになろう。

ここのところ、薄れかけていた他人への関心がよみがえってきた。

最近、コンビニのバイトに行っていなくて、つまんない。
いらっしゃいませ!って、愛想を振りまくのが、私けっこう楽しかったんだよね。とても、生きている感じがしていた。

ひょっとしたら、河崎もそうだったのかな。片っ端から女の人に声をかけるのは、それがとても楽しくて、生きている感じがしたから?
すてきな生き方だ。自分のやりたいことに正直に生きていた。それ以上にストレートに、相手を肯定するやり方もない。

誰かを嫌いにならない術を、私はいつどこで身につけてしまったんだろう。中にはあまり好きになれない人もいないわけではないけど、大抵の人は悪い人に見えない。
ほら今だって、私は河崎のことをいいやつだと思い込もうとしている。山ほどの女性が河崎の被害者となって泣かされたに違いないのに。

私の目は曇っている。人の嫌な部分から目をそらす。

誰かを嫌いになるのは、決して悪いことではないんだね。
嫌な部分もちゃんと見るようにしよう。それが本物の「関心」なのだと思う。

いいところだけ見て、嫌なところには興味ないんじゃ、半分しか関心を持っていないのと同じだ。

目の前のその人を好きになって、
目の前のその人を嫌いになって、
それからまた好きになったらいい。

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