わからないままでいることも、悪くないなってすこし思う。
わかりたいという気持ちを、ずっと持っていられるからね。
抜き出された例文はおもしろい。物語が広がる余白を感じさせる。思いもよらない秘密が隠されている可能性を含んでいる。
英語の単語帳や問題集に載っている、文脈のない一文や、ペンネームや、おみくじを引いた時に出てきた一言。もしくは引用。シェイクスピアやカフカの一文。
一部だけで、全部がわからないものに、私は惹きつけられる。
言葉は不思議だ。
繰り返し使い回されても、その度ごとに一つ一つ違う文脈を持つ。
誰が言ったか。誰に言ったか。どういう意図で、どんな背景が、その言葉を言わせたのか。断片的な情報は想像させる。
When I was printing my novel, the fan heater got broken downstairs.
「私が小説を印刷していた時、階下でファンヒーターが壊れた。」
例えば、どんな小説か、何ページあったのか、この一文からはわからない。
ファンヒーターがどんな壊れ方をしたのか、下にいたのは誰なのか、それともいなかったのか。ひょっとしたら、火事が起こった当時を述懐した文章だったのかもしれない。印刷中のプリンターも壊れた、と続くかもしれないし、壊れることなく印刷を終えたかもしれない。
ね、想像が広がるでしょ?
事実を言ってしまえばおもしろくないんだけれど、小説を印刷していたのは私だ。実際にファンヒーターも壊れた。
英語で書いたのは、どうしてだろう。英語の模擬授業を考えないといけないのに、気づいたらどうでもいい文章を書き始めている。
白い煙がもくもく出てきた。歌番組に歌手が登場する時みたいに。と母が教えてくれた。私は残念ながら見ていない。犬を見てて欲しいと押し付けられ、もくもく印刷を続けた。
火事には至らなかったし、プリンターが壊れることはなかった。小説は無事印刷された。
「飢え死に、犬死に、人死にとは言うけれど、孤独死は孤独死だし、不審死は不審死だ」
こうやってひとつの文を取り出してみると、わけもわからず読んでみたくならない?
小説は、ロシアのおはなし。あともう少しだけ直すけれど、1週間後にはもうオーケーと思う。もし気になったら、お気軽におっしゃってください。書き立てほやほやを送ります!
はやくよみたい!
お楽しみに!(^-^)