翌日、目が覚めたのは5時半前だった。右腕が痛い。両肩も痛い。ついでに腰も痛い。
37.2℃。
体温計に現れた数字を見て、今日は休むぞと決めた。コーンスープを飲み、ロキソニンを飲んで再び布団に潜り込んだ。それから職場に欠勤のメールを打ち始めた。
まだ6時半じゃないか。もう少し後になったら送信ボタンを押そう。1時間ばかりうとうとして過ごした。その間に夢を見た。夢の中でメールを10回くらい送った気がする。
次に気づいた時にはもう10時だった。慌ててスマホを確かめる。私が7時半に送ったメールの3分後に返事が来ていた。
「お大事になさってください」
ほっ。どうやらメールを送ることには成功していたらしい。
ああこれで安心して寝れる、と思ったのも束の間、その後も結構うなされた。
透き通った水が流れる用水路。緑のあぜ道。そこを歩いて私は学校に向かう。校舎は木造。白衣を着た理科の先生がトランプのカードみたいに何種類かの薬を持って私の目の前に差し出した。
「目をつぶって、選んで。運試しだ」
やめてくれ。コントをしている場合じゃないんだ。
起き上がって水筒に入れておいた水をごくごく飲んだ。透き通った冷たい水の味がした。
次は砂浜にいた。妹と私は暖かい地面に寝転がった。砂風呂に行ったことはないんだけど、多分そんな感じ。
砂は湿った色をしていた。じゃりじゃりではなく、おからの煮物みたいにしっとり柔らかく、握った手の中でほろほろ崩れる。
波打ち際で遊んだ。砂を掘るとそこに温かい水が流れ込んだ。波は大人しく、砂浜の一定以上まで侵入してくることはなかった。私も入ってみることはしなかった。空が暗くなっていたし、水の色も黒かった。
他の子どももいたはずだ。彼らを車に乗せて家まで送り届けなければいけない。じきに日が暮れる。ああ、もう帰る時間だ。
それから、白い夢を見た。切れ間に緑の大地が見えた。遠くには青い山も。それで、自分が雲の中にいることに気づいた。
だんだん地面は遠ざかって視界は全て真っ白になった。いや、目を凝らせば輪郭が見える。ワンピースの裾が翻るように、ひだが現れては広がり、また新しいひだが現れてはその上を覆っていくのだった。私はゆっくり呼吸をした。吸って、吐いて、吸って、吐いて。それに合わせて白い波が滑っていく。
次第に液体が気体に変わった。霧がぐるぐると渦を巻く。風のない空中で白い塊がほどけたり集まったりを繰り返す。
その中に少しずつ青色が溶け出した。それは、ヨーグルトにブルーベリージャムを混ぜるのに似ていた。白い雲はどんどん影を濃くしていき、完全に真っ黒になる前に私は現実に戻ってきた。
眠っているのか目を覚ましているのか境目のところでふと思い出した。そういえば、前にも不思議な光景を見たなあ。黒い蹄のある生き物の背に乗って、空から赤い大地に向かって墜落していく、めちゃめちゃダイナミックな夢。
あの黒い生き物は白い雲の中から来たのだろうか。