英単語の勉強のついでに

『AIが小説を書く日』という本を以前読んだ。名古屋大学で研究を行っているそうだ。型に当てはめて文章を作ることでAIにもオチのある話を書くことが可能である。
へええー、小説ってただ文を並べていけばできるもんじゃないんだなあ。

私もそれを実感してみたいと思った。

ところで、Googleで英単語を検索すると、「単語マスター」が出題してくるのを知っているだろうか。

「grove」の類義語/対義語はどちらでしょう。

そして2つの選択肢が示される。
これをやり始めたら止まらなくて、延々と答え続ける羽目になる。だって、googleが次から次へと問題をふっかけてくるんだもの。
「単語マスター」のいいところは、5問ごとにきちんと解説をくれることだ。英英辞典の定義と例文までつけてくれるのが素晴らしい。単語によっては、文脈がなければ色んな意味にとれるから例文を確認するのはものすごく大切なことだ。

というわけで、思いついた。「単語マスター」がランダムに出す問題の例文を片っ端から集めて文章を作ってみよう!
小説を書く上でのAIの利点は、完全なる無作為性ではないかと私は思う。
「完全なる」というのには誤謬があるかもしれない。「単語マスター」は相手の英単語レベルに合わせて出題しているかも。でも少なくとも、人間には思いつけない突飛な組み合わせで文章を作ることができるはずだ。

それは甘かったかもしれない。
てんでバラバラな例文を並べ替えて一生懸命繋ぎ合わせてみた。主語を変えるとか、接続詞をくっつけるとか、会話らしい会話になるように返答を作るとか、少々いじったところもある。でもできるだけ元の例文を残すようにした。
結果、筋の通らない話ができた。何の意味もない。オチもない。
小説ってただ文を並べていけばできるもんじゃないんだなあ。

もしかしたら、文をつなぎ合わせる技能の問題か。
才能のある人だったら、そこにある材料から本当に面白い話を作り出したかもしれない。冷蔵庫にあるものから、ささっと美味しい料理を作ってしまうみたいに。筋の通らない話の、筋を通してしまうことができたら、それはきっと不思議な物語になると思うんだけど。

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The Prime Minister held talks with his French counterpart. The French President demonstrated his proficiency in Japanese.

総理はフランス大統領と会談をもった。フランス大統領は日本語の堪能さを披露した。

“The plan is still in its embryonic stages.
The navigation system will be a boon to both civilian and military users.”

「計画は未だ初期段階にあります。その航海システムは軍と民間どちらにとっても利益をもたらすでしょう。」

Then, the president gave him a book.
“Repetition is a common rhetorical device, you know. There are thirty-three stories in this compilation.”

そしてフランス大統領は彼に一冊の本を手渡した。
「ご存知のように、反復とはありふれた修辞法です。この編著には33の物語が収められています。」

“So what?”
“Read this book if you’re interested in Claire’s conspiracy. The author wrote cryptic notes in a cipher.”

「だからなんだと言うのですか?」
「クレアの陰謀が気になるなら、お読みになってください。著者は暗号で秘密のメモを残しているのです。」

The title was read “the Onset of Winter”.
He was puzzled. “The neighbors thought the author very odd.”

タイトルは『冬の始まり』と読めた。彼は困惑した。「この著者は、近所ではかなりの変人と思われていましたよ」

“Did you see the author?”
“No, but I went to see my ailing sister the other day. We haven’t seen for long. She was going through a traumatic divorce.
Her ex-husband was portrayed as tyrannical and unloving. He is the very author.”

「著者に会ったのですか?」
「いいえ、でも先日私は病気の妹に会いに行きました。久しぶりに会ったんです。妹はトラウマ的な離婚をしたところでした。元夫は横暴で愛情のかけらのない人物だったそうです。そして彼がまさにその著者なんです。」

“I don’t know the author very well, but,” The French President said. “Well, anyway, let me show you how to read it.”
He roughly tore off some pages and read several lines from them aloud.
「私は著者のことはよく知りませんが」とフランス大統領は言った。「ええと、とにかく、どうやって読んだら良いかご覧に入れましょう。」
彼はいくつかのページを無造作に破り取ると、その中の数行を声に出して読んだ。

“In the northern states of India, Hindi has largely displaced English. It might be impractical to replicate western culture in the east. The puritan ethic was being replaced by the hedonist ethic.”

「インド北部の州では、ヒンディー語が広く英語に取って替わった。西洋の文化を東洋で複製することは、非現実的なのかもしれない。ピューリタンの倫理規範は快楽主義のそれに置き換えられつつあった。」

“Claire was working at the TV station. With a deft motion of her nimble fingers, the telethon was broadcast simultaneously on 31 US networks.”

「クレアはテレビ局で働いていた。素早く器用な彼女の指の動きは、31のアメリカ・ネットワークへ向けて同時に(24時間テレビみたいな?)長時間チャリティー番組を放映した。」

“Any change is bound to have legal ramifications. For example, this redundant brewery has been converted into a library.”

「どんな変化も合法的な結果になるだろう。例えば、この余剰の醸造所は図書館に建て替えられた。」

“Huge chunks of masonry littered the street. It was an arduous journey. The driver was nearly dead with fatigue. He found his duties increasingly onerous. Inwardly seething, he did as he was told. We swerved toward the edge of the precipice.”

「大きな岩の塊が道路にごろごろ転がっていた。つらい旅だった。運転手は死ぬほど疲れていた。彼は自らの責務が次第に重くなっていくのを感じていた。内心煮え繰り返りながら、彼は言われた通りにした。
私たちを乗せた車は崖に向かってハンドルを切った。」

Then, the French President said to the Prime Minister, “Connect the sentences, and you’ll find the meanings over the cipher the author left.”

それから、フランス大統領は総理に言った。「文と文をつないでください。そうしたら、著者が暗号に残した意味がわかるでしょう。」

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