二度目のパンク

「自転車屋さんに持って行ったらフロントギアが簡単に動くようになって驚く自分」にデジャヴを感じた。めちゃくちゃ不思議なことなんだけど、こうなることを最近夢で見たような気がする。

朝、会社に行く途中で後輪がパンクした。パンクすると道の凸凹が直にお尻に伝わってくる。ペダルを踏んでも進みづらくなるのですぐわかる。
パンクしたのは2回目だ。ロードほどではないがタイヤが細いのでパンクしやすい。 1回目は乗り始めて2週間ほどの頃、歩道に上がる縁石のところで前輪をリム打ち。その時は、近くにたまたまロードバイク専門店があったので持って行って直してもらった。
今回もリム打ち。麦刈り直後の農道で。刈り取り機が落っことしていった泥が至る所に落ちていて、ただでさえぼこぼこの道を進みづらくしていた。普段からこの場所を通る時は用心していたつもりだったのに。パンクしたのは、サドルに座り過ぎていたせいだと思う。もう少し重心を前に移していたら、ペダルに体重を乗せていれば、パンクは避けられたかもしれない。あれこれ思い悩んでも覆水盆に返らず。ぺたんこになった後輪の空気は戻らない。
不幸中の幸い、職場まであと1kmほどの地点だったので自転車を引いて歩いて行っても間に合った。

問題は帰り。会社の近くに自転車屋さんがあればいいのだが、そんな都合よく物事は運ばない。
まず、家族に車で迎えにきてくれないかとLINEした。帰ってきた返事は、「テニスがあるから遅くなる」
仕事帰りのテニスの方を優先するのか、薄情者め。仕方ない。歩こう。歩く速さを5km/hとするなら、2時間半もあれば13kmの道のりを歩き通せるだろう。20時半まで迎えを待つよりも歩いて帰ったほうが早そうだと判断した。
すると、一緒に働いている人が言った。
「イオンまで車で乗せて行ってあげるよ」
ちょうどその人の帰り道にイオンがあって、そこの自転車屋さんでパンクを修理してもらえれば乗って帰れる。めっちゃありがたい申し出だった。
車に積むため、前輪を外そうと四苦八苦しているところに、違う部署の名前も知らない方が通りかかって手伝ってくれた。「同じ部署の◯◯さん、自転車に詳しくて修理してくれるかも」とわざわざ電話で呼んでくれる人までいた。私は自分1人で歩いて帰るつもりでいたのに、こんなにたくさんの人が助けてくれると思わなくてびっくりした。
結局、道具がないとパンクは直せないということがわかり、イオンの自転車屋さんまで乗っけてもらいお店で修理した。
タイヤからチューブを外して水を張ったタライにつけていくと、あるところでぷーっと水が噴水のように噴き出すポイントが見つかった。ここがパンクした箇所のようだ。穴を見つけた後はタイヤを手で触って釘とか尖ったものが残っていないか確認する。それを怠るとせっかく修理してもまたパンクしてしまうのだそう。
「4,000円で点検もできますがどうされますか?」
「お願いします」
この際気になるところは全部見てもらいたい。ブレーキの緩みを直してもらった。これまでなぜかできなかったフロントギアの切り替えも、お店の人が触るとあっけなくできるようになった。えっ、嘘!?こんな簡単に動くようになるなんて、信じられない!
汚れや錆が原因でギアが動きにくくなることもある、とお店の人は説明したけど、何か魔法でも使ったのではないかと私は疑っている。

長いことかかっていた封印が解かれたような喜び。修理してもらった翌日からアウターギアで走り始めた。これまではずっとインナー(軽い方のギア、山登り向けと言われる)で走っていたんだけど、アウターに切り替えるとインナーギアの限界を超えてさらにもっと速く走れるのを感じる。自転車のペダルって軽い時はそれ以上にスピードが出すのが難しくなる。回転数を上げるのにも限界があるから。ペダルが重い時は漕いで漕いで、この重さを軽くしていくことによってどんどん速くなる。30km/hでこのペダルの重さなら、さらにスピードを出せるということなんだ。そんなに速く走ってどうするのって思う一方で、どこまで速くなれるのか知りたいという欲求が抑えられない。
通勤の一回一回に全力投球していると言ったら笑われてしまいそうだが、本気で楽しんでいるのは確かだ。昨日よりも今日、今日よりも明日、より上手な走りができるようにベストを尽くす。姿勢を変え、漕ぎ方を変え、あれこれ試しては一番効率のいい力の伝え方を探す。もっともっと、上手くなれると思うんだ。

同じ会社にロードバイクに詳しい人がいて、「昔は乗っていたんだけど、子供が産まれてから全然乗らないから」とパンク修理キットを貸してくれた。ペンケースみたいな入れ物でファスナーを開けると、替えのチューブとポンプがコンパクトに収まっている。
「小さいポンプだから空気を入れるのが大変かもしれない。でもこれがあればどこでパンクしてもとりあえず家に帰れるよ」
お守りのようにいつも自転車に乗せて走る。今度パンクしたらやり方を教えてもらって自分でもできるようになろう。
また別の方からは、「うちで使ってないのがあるから」と、扇風機付きの服をいただいた。よく工事現場の人とかが着ているあれ、なんて呼ぶのかな。「空調服」っていうのだろうか。
自転車に乗る時に少しでも涼しくなればと思ったんだけど、ロードバイクのような速さを追求する自転車とは相性が悪いかもしれない。空調服は内側から空気を送ってふわっと膨らませる。それが空気抵抗になるので漕げども全然スピードが出ないのだ。ロードバイクのレースで選手たちがぴちぴちの服を着るのにはそういう理由があるんだなと体感した。通勤するには普通のTシャツ・ジャージで十分だけど。
空調服は畑仕事をする時に活用させていただこうと思う。自転車に乗っていない時に着ると涼しくて毎回感動してしまう。

自転車なら空調服を着ずとも走り出せば風が気持ちいい。この風さえあればどこまでも走っていける気がする。究極のエコクーラー。
実際はそううまくいくはずもなくて、ペダルを漕ぐと代謝が上がってどうしようもなく暑い。保冷剤を首に巻いて対策してみるけど、これ以上暑くなったら体がもたない気がする。電車通勤を検討するべきか。どうやってこの夏を乗り切ろうかと思案中。

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