昨日は筆談デートをしてきました。くぼきくんが想像以上に「くぼき」っていう顔をしていたのがとても面白かったです。くぼきくんの名前を知らなくても、顔を見ただけで名前を当てられるとおもう。
よしだくんとのことはまたあらためて書くと思います。よしだくんは整形した人のような笑い方をします。
さて、今日はオープンシフトでした。もともとはお休みだったのだけど、どうやら店員の間でインフルエンザが流行っているようで。
でね、今日は久しぶりに常連に会いました。久しぶりっていうか、2週間ぶりぐらい。ここ最近クローズが多くてずっと会えてなかったのだよね、彼女に。
わたしが初めてさおちゃんに会ったのは、この店舗に異動してきた初日だった。
店長だったか、誰かが「あの子はさおちゃんっていうんだけどね、知的障害をもってるみたいなんだ。このお店の招き猫のような存在だよ」って言っていた。
招き猫(笑)なんて笑い飛ばしたけれど、しばらく働いているとわかってきた。彼女にはほんとうに招き猫の素質がある。
さおちゃんは、8時半ぐらいにお店に来て新作をオーダーしていつもの席に座るのが日課。
最初はひとりで算数のドリルを解いていたり、窓の外をボケーっと眺めていたり、暇そうな店員に絡んだりしている。
で、9時ぐらいになるとさおちゃんよりふた回りほど離れたおじさんやおばさんたちがぽつりぽつりと入店してきて「おはよう、さおちゃん!」と彼女の周りに座りはじめるのだ。
最初は彼女の親か友人かな?と思った。でも、どうもそれにしてはおかしいのだ。彼女と仲よさげに喋ったあとは、ばらばらに帰っていく。彼女に会うために来店したかのようにね。
わたしもさおちゃんと顔馴染みになると、さおちゃんからしょっちゅう絡まれるようになった。
手話の「こんにちは」を覚えたみたいで、何回も繰り返してぺこぺこする。わたしが「こんにちは」って返すと、嬉しそうに「あのね、これね、おいしい。おいしい!あ、あまい!」と手話ではないけれど、必死に手をひらひら動かす。
こんなにわたしに話しかけることを躊躇しない人と、わたしは初めて出会った。
知的障害があるから?いいや、それは違うとおもう。きっと彼女の「人を愛する力」が優れているからだろうね。誰と話していても嬉しそうに顔をとろけさせているさおちゃんは、天然人間タラシだ。
わたしもすっかり彼女のファンになってしまった。彼女に会いにくる人たちの気持ちがとってもわかる。
でね、このまえさおちゃんを心の底から大好きになる出来事があった。
わたしのお店はちょっとお皿やマグカップを返す場所がわかりづらい間取りをしているから、頻繁にお客さんが使用済みのトレーを持って右往左往する姿を見る。
だから、店員はその姿をみつけたらトレーを受け取って下げるように言われている。わざわざ返却口に誘導して処分をやらせるわけにはいかないからね。
で、1ヶ月ほど前だったかな、とても忙しいときにトレーを持って右往左往する人がいたから話しかけてトレーを受け取った。さおちゃんの席の前でね。
そしたら、落ち着いてきたときにさおちゃんがわたしのところに歩いてきて怒りだした。
「ななこちゃん!あのね、だめだよ。ああいうお客さんにはね、教えないとだめだよ。終わったものは、じぶんでかたづける。ね、忙しいとき、たいへんだよ」
一生懸命怒ろうとするさおちゃんに愛おしさを感じてうっかり声を上げて笑ってしまった。彼女ほどお客さんらしくないお客さんはいないと思った。
さおちゃんは人への思いやりが半端なく深い。だからしょっちゅう怒るし、しょっちゅう泣く。なんて可愛いの。愛おしい。子供にしたい。さおちゃんの方が年上だけど。
最近、【聴覚にハンデのあるスタバ店長】を目指す友人がこう言っていた。
「自分がスタバを続けられているのは、常連のおかげだ」
ほんとうにその通りだな、とおもった。常連とはそんなに深い話なんてしたこともないし、微笑まれたら微笑み返すぐらいの関係なのに、なんでこんなに大きな存在になってしまうのだろう。あっという間に垣根を飛び越えてきても許せてしまう。
わたしはさおちゃんが大好きだ。
わい、笑顔綺麗やろ?
さおちゃんはとても素敵で、それを見るななこさんの視点もいいなー
短編小説の一つを読みおわったような気分