[僕から君へ]

 

 

 

–青年は一目惚れをしてしまったらしい。

 

 

 

黒い豆は粉々に砕けて

白い絨毯の上に広げて

滝のように落ちる熱湯

白い煙は硝子を曇らせる

眼鏡を拭いては「また曇ったね」と

弄られて君は曇りなく笑っていた

朝日に照らされた商店街の片隅にある

喫茶店のその隅の席に座っている僕は

君に落ちたんだそう熱湯のように

名前も年齢もわからない君を見たのは

静かな場所求めて探し歩いたテスト期間

片隅にある喫茶店が僕を呼んでいた

ここなら静かに勉強ができるはずだった

僕のこの胸の高鳴りがそうさせなかった

 

だけど僕は君から見たら

大勢いる客の一人

それ以上など有り得ない

ギャルゲーじゃあるまいし

それでも疼く心の奥が疼く

奥深くの扉の内側から

ノックの音が響くんだ

恋心がノックをしている

激しく鳴り響く脳内に設置した

赤い警告ランプ

 

蜜柑色に染まった商店街を

半分の太陽は見守る

夏休みの僕は喫茶店に行く言い訳を

探しては宿題を抱えて

毎日君に会いに行く

膨れ上がる恋心に痩せていく財布

ある日君は僕にこう言ったんだ

「いつも来ていますよね!」

心の奥深くの扉の内側から響く

ノックの音はやがて扉を

破壊するべく殴る音とかに

変わっていく

激しく鳴り響く脳内の

赤い警告ランプを僕は

そっと遮光性と防音性のある

黒い布をかけたんだ

君への想いを綴った手紙を

僕から君へ送ります

 

あゝ。

 

桃色の恋は粉々に砕けて

破片の行き場は僕の海馬

滝のように流れ乾く涙腺

手紙はずっと鞄の奥底に

夕日で煌めいている商店街の片隅にある

喫茶店のその主人は何も知らずに僕に告げた

名前も年齢もわからない君はもう居ないんだ

君はどこへ行ってしまったのかきっとそう

この街から旅立ってしまったんでしょう

おそらくいちばん大切な人と

 

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