動機

「自分を捨ててまで誰かのために一生懸命になること」
それを大人だとは思わなかった。

誰かのために一生懸命になれるのは、それは素晴らしいことだ。でも、自分を捨てたらいけない。自分を捨てたら、何もなくなってしまうよ。

どんな人にも自分を大切にしてほしいなぁと思うんだ。

「大人」の代表例としてぱっと思い浮かぶのは、大学のK先生。

私はいつも先生の授業が好きだった。
学生一人ひとりに笑いかけてるみたいな気さくな話し方。教える内容は今まで私が深く考えたことのなかったような、でもものすごく大切なこと。
戦争と平和、食べること、日本の中で実際に起こっている差別・貧困などなど。すべて生きることにつながる学びだった。

先生は、ちょっとくたびれた大人に見えた。自分ではない誰かのために一生懸命で、そのためには自分の時間や労力を払うことをいとわない、そんな人だった。

先生を見るたびに、そんなに無理して頑張らないでください、っていう気持ちになる。でもそれは決して言葉になることはなく、ただ私の喉元に苦しさを残していく。

自分の目で見て、自分の頭で考えて、自分を大切にしながら生きよ。
ということを先生は学生たちに教えようとしてくれたんだと思う。

でもね、私は先生にも自分を大切にして欲しいな。だって先生言ってたじゃん。
日本が戦争に舵を切ったのは、国民みんなが国のために自分を捨てる選択をしたからだって。

二度と繰り返したくない悲惨な戦争。他人のためになら命を捨ててもいい?
「みんなのために」は無責任にも、知らず知らずのうちに平和を揺るがす。
ね、怖くない?

自分を捨てるなんてどんなことがあっても、たとえ誰のためであっても、絶対して欲しくないなぁ。
個人に自分を捨てさせる社会なんてやだ。気にくわない。いっくらでもだだこねて言うよ。

本当なら、自分というものは一番犠牲にしてはいけないはずだ。
自分にさえ見放されてしまったら、きみはどうしたらいいの?

私は心に決めている。
自分のために教師になるんだ。
それが結果として、誰かの役に立つのなら嬉しい。

自分も他人も同じように大切にできる人こそが
本当の「大人」なんだと思っている。

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