「欲しかった」

 

 

–僕と君のふたりのはなし

 

 

 

 

宣誓 我々終活を始める一同は
正々堂々と真実の愛を探すことを
ここに誓いますここに誓いました

愛の全部が僕は欲しい
つまらないものなど見たくない
空っぽの器を満たす旅

いつも探してるどこかにあるはずの愛を
人混み商店街を横切る野良猫とか
いつも見つからないどこにも落ちてない愛が
満員電車を前に狼狽る老婆とか

満たされてる君は「寂しいね」と
満たされない僕は「哀しいね」と
誇大妄想も甚だしいな
君はもう終活を終えてるのだから

 

先生 不透明な箱庭の閉塞の中
教科書全てが真実とは限らないことを
なんで教えないなんで教えなかったの

愛の答えが僕は知りたい
純粋なままでは見つからない
心の渇きを言い訳に

いつも探してるどこかにあるはずの愛を
深夜だけの占い師を訊ねる浮浪者も
いつも見つからないどこにも落ちてない愛が
とわに眠らない都会で掴めない星空も

余裕で解けた君は「簡単だよ」と
今も解けない僕は「単調だな」と
脈絡が無くて滑稽だな
君はもう答えのその先は行けない

 

先制 相手よりも先に動いたもん勝ちだ
僕が求めた愛も真実も全てはまやかしで
だから見つからない道理で見つからないんだ

愛のその先から僕は逃げたい
それが何もないのが見える前に
あいてる両手で隠したい

探すのをやめたどこにもないはずの愛を
交差点の点滅する緑の数秒間
見つからなくなった足元に落ちてた愛が
何処かから匂い漂う副流煙の嫌悪

機先を制する君は「お先にね」なんて
出鼻を挫いた僕は「ご勝手に」なんて
諦観を漂わせてもういいかな
僕はもう欲を満たすことはない

 

君が僕は…

 

 

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