栗拾いしたい

今日は何のテレビを見てるかな、ばーちゃん。

昨日はよく眠れなかった。また月曜日がやってくることが不安だ。

栗ごはんを炊いた。パックに入って売られていた栗は甘く煮詰められていて、不自然な感じだった。栗きんとんにしたほうがよかったんじゃないか。
秋になるとばーちゃんが栗ごはんを炊いてくれたのだ。私は皮剥きを手伝わされた。茶色のからを割った後、さらにまた、薄い皮に包まれていて、その「渋皮」も取り除かなくてはいけないからなかなか大変なのだ。
適当な大きさに割った栗は生のまま研いだ米と一緒に炊く。味付けは塩のみ。炊き上がっても、芋みたいなくすんだ黄色をしていた。シンプルだからこそ、そのままの栗の味が引き立つ。
甘い栗のがいいなら、おはぎを食べればいいじゃん。私はあの、甘くない栗ごはんがよかったのだ。

不安なことは色々ある。月曜日だけじゃない。
もっと強くなりたいと思う。

ばーちゃん家の居間でテレビを見ていた、あの頃に戻りたい。何か嫌なことがあると私は決まって隣の家に続く戸をくぐった。そしてピアノを弾いた。洋間にはじーちゃんのタバコの匂いが染み付いていた。ひとしきり弾き終わると、嵐にしやがれか演歌か田舎に乾杯か、どれかを見た。中身のないようなテレビ番組を、ばーちゃんは楽しみに見ていたのだ。
それがよかった。私が何を悩んでいても、呑気にテレビを見ていていい。
あーあ、おはぎが食べたいな。

あのね、ばーちゃん、今日私はひとつ乗り越えたんだよ。
今日はボクシングジムでテストを受けた。ボクシングといっても、リングの上で戦う競技とは違う。護身術を練習しているんだ。パンチとキックの基本的な練習と、それから首を絞められた時の解除の方法とか、そういうの。
長時間ずっと動き続けて、ひと夏分の汗をかいたと思う。持ってきた1リットルの水分を飲み干した。肘に青あざをこしらえた。
あああ疲れた!シャワーを浴びたらもう寝よう。

今夜はすぐに眠れそうだ。テストの結果も月曜日のことも、朝がきてから心配すればいい。明日もきっと大丈夫。昨日より一日分、私は強くなれたのだから。

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