初夢

夢の中で私はゲームをしている人と言葉を交わし、世界の一員として存在していた感覚はある。でも思い出せるのは、3つの場面を映画でも見るようにただ眺めているだけの時間。

①お土産屋を自転車ですいっと通り抜けて行く。
厚紙の箱にきっちり並べられた饅頭や、ウサギの毛皮のようなふわふわの白い手袋をした子供をチラッと横目で見た。
競技用の自転車だから、その気になれば風のように走ることができる。高速のETCを通過する時みたいな感じでスピードを落としてお土産屋さんを通り抜ける。

一つの世界から、もう一つの世界へ向かっている。

②会社
「常務」
呼びかけられたのはシワやしみのある50代くらいの男の人。双子のようにそっくりなもう一人が隣に立っている。
3人目は頭が本の表紙の人間。首から上がペラペラの紙なのだ。真ん中にピンクの付箋がくっついている。漫画のキャラで鼻柱に絆創膏をくっつけているような感じ。借り物の頭は、体の一部をどこか別の世界に置いてきてしまったからなのだろうか。

3人の真ん中に辞書みたいな分厚い本が置かれている。表紙が破れているのは、3人目の頭に使われているせいだろう。

(頭が紙ではない人の)ひとりが電流に打たれたみたいに突然、ハッとした表情で本に手を伸ばす。

「この世界は仮もの
誰かがゲームをプレイしている 」

意識だけ飛ばしてえいっとジャンプして、足から飛び込んでいくイメージ。本のページに飛び込もうとするけど間に合わない。
入る前に、つながりが消えてしまった。

③ ゲームをプレイしている人
見開かれた瞳の奥に宇宙が見える。果てしなく広がる暗闇の中、星座のように図形が浮かび上がる。

2つの図形がパッと切り替わる。
一つは、長方形の中に円、その中に点が2つ。
その前にもう一つあったんだけど、よく思い出せない。円がたくさん散らばっているような形をしていた。

世界のつながりがパッと切り替わる瞬間だった。パチリと配線が切り替わるような変化。何が変わったのか具体的にはわからないけど、何かが変わった。

ゲームをしている人の姿も見た。
でもその人が操作したから変化が起こるわけではない。ただ世の中の流れには、時計の針が数字を指すような、惑星が「食」を起こすような、かちりと配置がはまるタイミングがある。

こういう抽象的な夢を見ることはたまにある。目を覚ます前は「うわ!意味深な夢だなあ」とワクワクしているのだけど、一度目覚めてしまえば訳わからなさすぎて覚えていられない。

私の脳が見せることのできる映像をコラージュして、夢というのはできているのかもしれない。
自転車が出てきたのは前日、ロードバイクの小説に読み耽っていたせいだ。お土産屋さんは明らかに、この間旅行に行った場所と同じだった。現実では自転車で通り抜けする人は誰もいなかったけど。
会社の役員なんかは私が働いている会社の人間の顔をちょちょっと変えた程度で実によく似ていたし、四角と丸と点でできた図形はそれ自体に意味なんかなくてハリーポッターの死の秘宝のマークを真似したかったのかもしれない。

ウィッチウォッチという漫画で、パンの名前を日本語に翻訳するシーンがある。例えば、「エピ」「チョココロネ」=「駅近いからね」
夢に意味を当てはめることは、日本語をパンの名前に置き換えることになんだか似ている。
パン語の翻訳を見ていると、「なぜそんなにわかるの?」と突っ込みたくなるけど、でも不思議なもので人からどう突っ込まれようと「これしかない」という確信がある。
こうして文章にしてみると本当に訳わからない夢だけど、少なくとも夢を見ている最中は、「なんかすごい夢見てる!」という感覚だった。

世界が切り替わるタイミング。
今までの価値観とかが覆され、変化していく。

2025年が始まった。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。