ものもらいができた。具体的に何をもらったのかは分からない。ただ右目の下まぶたが思い切り赤く腫れて、痛い。仕方ないので、900円もする目薬を買ってきてさした。かなり沁みた。しばらく経つと、口にまで苦い味がした。腫れはひくどころか、朝より少し酷い気がする。 “もらいっぱなしで、情けないっす” の続きを読む
窓の内から
アパートのベランダの柵に、時々ジョウビタキという鳥がとまる。背は濃い藍色、羽の真ん中はちょんと点を打ったように白、胸から腹にかけては鮮やかなオレンジ色をしている。寒い季節にはどこにでも見られる平凡な鳥だけど、 “窓の内から” の続きを読む
紙片
海沿いの町の、路地の奥に、「紙片」というお気に入りの本屋さんがある。卒業する前にもう1度立ち寄りたいと思ってたんだけど、最近は店長さんが旅行に出られて休業続きだったので、もう間に合わないかもな、なんて思っていた。でも今日ね、ひっそり営業が再開されていることに気付いた。とてもうれしい。 “紙片” の続きを読む
頑張ったり、諦めたり
今日は北広島へ行きたい。そんな気がした。けれど私は市内へ行かなくてはならなかった。何故、市内なのだ。市内へなど、私は行きたくない。今日は手ぶらでひょろっと、北広島へ行きたいのに。そんな気分なのに。正確で生真面目な電車が、時々は好きだけど今日は嫌い。「いや、お天気がパリッと気持ちいいんでね、ちょうど土曜日やし、本日は夕方までおさぼりすることにしまして。すんませんね、おほほほおん。」なんて、たまには言ってほしい。試しにちょっと言ってみてほしい。いいじゃないか、ねえ。かわいいじゃないか。 “頑張ったり、諦めたり” の続きを読む
L’ultimo caffé
初めてイアンナネッリ (Simone Iannarelli) の << L’ultimo caffé >> を聴いた日は、今思い返しても不思議なほど、人生の幸運が重なり合っていた。 “L’ultimo caffé” の続きを読む
ロストメモリーシアター
看板も案内もない小汚い二重扉をこじ開けて地下へ降りると、手元をやっと照らす程度の灯りしかない、暗く煙たい空間があって、人々はそこで土色のマグカップを片手に仏仏と語り合ったり、 “ロストメモリーシアター” の続きを読む
抱きしめ方が分からない
花束を抱いたことはありますか。誰かのために買った花束でもいい。誰かからあなたに贈られた花束でもいい。パリパリとした音のする包みでふんわりとくるまれた花の束は、どうしてあんなに不思議な重さ、捉えどころのない形をしているんだろう。私はあれを抱くたびに、正しい腕や手の置き場所、丁度いい力加減などが分からず悩んでしまう。
抱きしめ方が分からないんです。 “抱きしめ方が分からない” の続きを読む
静物のための音楽
遮光カーテンが閉まった部屋には、朝も昼も夜もこない。おまけにここ数日は、外からの車の音や人の声すら聞こえてこない。盆や正月シーズンの学生街なんて、毎年毎年ほとんど空なのだ。今年はそこから逃げ出すように飄然旅行に出かけもしたけど、疲れれば結局、ここに帰ってくるほかない。 “静物のための音楽” の続きを読む