林田さん
お久しぶりです。ハルキストの吉田です。
最近本当に暑いですね。お元気でしょうか。
生きるために、書く。
令和最初の夏は暴走機関車のような熱気を帯びていた。今日は北海道が一番暑くて、沖縄が一番涼しいと天気予報士は告げている。何もかもあべこべだ。当たり前はもう通用しないらしい。僕が信じていた当たり前も、どうやらこの暑さで溶けてしまったようだ。小学生の頃、普通に大学を卒業して、普通に就職するものだと思っていた。だが22歳の春、僕はまだ大学にいた。
「もうすぐお母さんが帰ってくるからね」
犬をひとり残して家を出た。
レモンは不安そうな目で見上げてくる。
鍵のかかった家の
柵の中で
家族の帰りを待っている。
私は1ぴきになりたい。
1ぴきの犬。
1ぴきの猫。
1ぴきの狼。
自由できままな心を持った存在。
何も寂しくはないよ。
好きな時に
好きなところへ行って
好きな時間に帰ってくるのだから。
小学校の頃、音楽鑑賞が苦手だった。授業でベートーベンとかシューベルトの音楽を聴いて鑑賞分を書かされるやつ。
何を書いたらいいのかわからなかった。『魔王』や『荒城の月』が吹き抜けていく。空っぽの私の頭の中。真っ白な鑑賞プリント。
“好きでもない、嫌いでもない” の続きを読む