令和時代の憂鬱日記

令和最初の夏は暴走機関車のような熱気を帯びていた。今日は北海道が一番暑くて、沖縄が一番涼しいと天気予報士は告げている。何もかもあべこべだ。当たり前はもう通用しないらしい。僕が信じていた当たり前も、どうやらこの暑さで溶けてしまったようだ。小学生の頃、普通に大学を卒業して、普通に就職するものだと思っていた。だが22歳の春、僕はまだ大学にいた。

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1ぴき

「もうすぐお母さんが帰ってくるからね」
犬をひとり残して家を出た。

レモンは不安そうな目で見上げてくる。
鍵のかかった家の
柵の中で
家族の帰りを待っている。

私は1ぴきになりたい。

1ぴきの犬。
1ぴきの猫。
1ぴきの狼。
自由できままな心を持った存在。

何も寂しくはないよ。
好きな時に
好きなところへ行って
好きな時間に帰ってくるのだから。