雨の日の朝早くだった。母が車を運転して送っていってくれる。どこへ向かっていたのか、今ではもう覚えていない。ただ、あの日の踏切は、通勤時間で急いでいる車の列をあざ笑うかのように、意地悪く遮断機を上げ下げしていた。黄色と黒に交互に塗られたバーは、電車が来る気配がないのに下がったかと思えば、今にも踏切に電車の鼻先が達しようというのに上がり始める。 “石の里、水の谷” の続きを読む
из Красноярска
次のバス停は…
「レーニン通り」
「プラスペクト・ミーラ」
「ホテル ‘オクチャブリスカヤ’」
「スリコフ美術館」
「オペラとバレエ劇場」
「映画館 ‘ルーチュ’」
「バスターミナル」
「東方市場」
「ルナチャルスキー通り」
「クルチャートフ通り」
「庭」
「大学」 “из Красноярска” の続きを読む
受容
字幕上映している数少ない映画館の1つ、 “受容” の続きを読む
夏が終わった、というただそれだけの話
台風は迷惑をかけたお詫びのつもりか、行ってしまった夏の幻を数日分ほどここに置いていった。 “夏が終わった、というただそれだけの話” の続きを読む
無意味
時々何もしたくなくなるよ。何をしたって心が満たされないままな気がしてきて。何をしたって意味などないような気がしてきて。 “無意味” の続きを読む
なんでもない一日
ゆらり、ゆらりと空が傾く。頭上を月が行ったり来たり。
私はブランコの鎖を握る手に力を込めた。飛び降りたい衝動と恐怖で心が揺れる。やめとこ、飛び降りたら鉄柵にぶつかって骨が折れるかも。 “なんでもない一日” の続きを読む
no title
流石にこれ、このまま流したらまずいよね、たぶん。
彼女は足元のバケツに視線を落としていた。何が入っているのかと少し近寄ると、匂いですぐにペンキと分かった。 “no title” の続きを読む
「チョコレートを食べるのが私の夢なんだ」
「これ、プレゼント」
私はチョコレートの入った袋を手渡した。
ああ、それは約束だったんだ。記憶がすっかり蘇る。
「牛乳なしのチョコレートを見つけたら教えるね」
“「チョコレートを食べるのが私の夢なんだ」” の続きを読む
1 сентября
ついに9月が来てしまった。
気づいたら、「いま」が終わってくれるようにと、ただただ生きている。この1分間、この1時間、この1日、この1週間、この1ヶ月、この1年が、「いま」でなくなってくれるようにと。 “1 сентября” の続きを読む
私をいじめないでくれ
ひとやすみの公園。
小さな空き地にベンチばかりが4つもある。そのひとつに腰掛けて、ぼーっとする。子どもたちに会う前の5分間か、みんなとさよならした後帰る前に10分間、自分だけになる時間。
今日は、公園には寄らなかった。雨だから。
代わりにダーリンに書くことにしよう。 “私をいじめないでくれ” の続きを読む