石の里、水の谷

雨の日の朝早くだった。母が車を運転して送っていってくれる。どこへ向かっていたのか、今ではもう覚えていない。ただ、あの日の踏切は、通勤時間で急いでいる車の列をあざ笑うかのように、意地悪く遮断機を上げ下げしていた。黄色と黒に交互に塗られたバーは、電車が来る気配がないのに下がったかと思えば、今にも踏切に電車の鼻先が達しようというのに上がり始める。 “石の里、水の谷” の続きを読む