よゆう

「とても落ち着いていたね」
実習中、先生方から頂いたコメントに、私は面食らってしまった。落ち着いていただなんて、全然そんなことない。
頭はいっぱいいっぱい。授業を進めるために、注意力の全てを総動員する。

実際は、色々やらかしてた。 “よゆう” の続きを読む

ロシア語メモ⑦ блинчики

部屋の中はもうずいぶん明るくなっていた。薄いカーテンが眩しさを多少は和らげてくれていても、日がすっかり昇ってしまっていることは隠しきれない。

おいしそうな匂いがしてきて、目が覚めてしまった。夢の中で誰かによく似た声を聞いた気がするけど、今となってはもう思い出せなくなっていた。
とりあえず、朝ごはんだ。顔を洗ってキッチンを覗くと、予想通りルームメイトがブリンチキを焼いていた。フライパンを使って器用にクレープ生地をひっくり返す。

ルームメイトは私に気づくと、焼きたてのブリンチキを差し出した。
「おはよう、ブリンチキ焼けてるよ。ほらこれ、1枚目」 “ロシア語メモ⑦ блинчики” の続きを読む

ロシア語メモ⑥ замёрзнуть

目を開けて時計を確かめると7:30を指していた。ああ眠い。でも起きなければ。
着替えと朝食をすませると、分厚く重いコートに袖を通した。鏡の中に映る自分の姿を確かめる。目以外はすべてマフラーと帽子と手袋にしっかり隠されている。
さあ、準備万端だ。重い寮のドアを開け、私は外へと踏み出した。 “ロシア語メモ⑥ замёрзнуть” の続きを読む

10 июня

今日、実習の記録の最後のページを書き終え、紐でとじた。全てがきちんと終わった感じがする。

明日は、6月10日。
десятого июня

偶然にも、
10ヶ月間の留学を終えてクラスノヤルスクを発ったあの日から、ちょうど2年目だ。 “10 июня” の続きを読む

1ぴき

「もうすぐお母さんが帰ってくるからね」
犬をひとり残して家を出た。

レモンは不安そうな目で見上げてくる。
鍵のかかった家の
柵の中で
家族の帰りを待っている。

私は1ぴきになりたい。

1ぴきの犬。
1ぴきの猫。
1ぴきの狼。
自由できままな心を持った存在。

何も寂しくはないよ。
好きな時に
好きなところへ行って
好きな時間に帰ってくるのだから。