おだやかに、熱く議論する

議論っていうのが私は苦手だった。相手の言うことに対して何かを言わないといけないけれど、誰かを前にしていると頭の中にあるはずの、自分の意見や言いたいことがするするほどけて雲散霧消。
それでも何か言わなくちゃ。かろうじて口に出せた意見はへなへなと、もうすでに自滅している。

違う、こんなことが言いたいんじゃない。
自分の中が空っぽになっていく感じ。
“おだやかに、熱く議論する” の続きを読む

再起動

バイトが終わって家に帰ると、私はベッドに転がり込んだ。油臭いけど寒いので布団に潜りこむ。そのまま夕食までの4時間をまんじりともせずに横たわっていた。
疲れきって眠いはずなのに眠りはおとずれなくて、その間に思考は記憶の波間を漂った。ゆらゆらと、あてどもなく。
ときどき目を開けては時計の針が進んでいることを確認した。
“再起動” の続きを読む

想像力が窮地を救う

今日初めて場面指導を練習した。

まずテーマが出される。「明日は生徒の楽しみにしている野外行事があります。帰りのSTで担任としてどんな話をしますか?」

30秒考える時間があって私は椅子から立ち上がった。
「明日は火力発電所への見学に行きます。みんな楽しみにしていると思います。楽しみだよね?」

私の視線は架空の生徒を探してうろうろさまようけれど、目の前に座っているのは眼鏡をかけた白髪混じりのおじいちゃん。試験官役をしている面接指導の先生だ。
私は必死でクラスの生徒30人を思い浮かべようとする。 “想像力が窮地を救う” の続きを読む