なんでもいいから2000字書いてみよう。2019/11/20

クリスマスを控えたToys “R” Usのように

文章をなんでもいいから2000字くらい書いてみようと思った。何でそんなことを考えたのだろうか。もしかしたら、時間の無駄遣いとしか表現しようがないかもしれない。そうなってしまう可能性が十分にある。僕はそれについてしばし立ち止まって考えてみたが、まあ、なんとかなるだろう。というのも、僕はこの文章に関して、何も意義を求めていないのだ。とても正確に言葉を選ぶと、この文章は自己治療ということができるだろう。

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発見

人はなぜ、コンサートやライブに行くのだろう。YouTubeやCDから音楽を聴くことができるのに。

前から疑問に思っていたけれど、その答えがわかった気がする。

ステージの上であの子が歌っている。ギターを弾いている。
ああ、あんな風に歌うんだ。

その子の観客になれたことが、私はうれしかった。

パインの消しゴム

 

 

 

 

 

そこは黄緑のかかった水色の天井だった。果てまで続く天井は終わりが見えなかった。天井にはわたあめのような白い雲がいくつか飾られていた。

目の前に不思議な構造物があった。建物と呼ぶには悩んでしまう、駅前によく置かれるような意味のつかめないモニュメントに似た、構造物だった。

バケツいっぱいの白にたった一滴の黄色を垂らしたような、白とは呼び難い色をした長方形のブロック状を不規則的に組み立てられていた。それはかなり高く、自然と黄緑のかかった水色の天井を見てしまうほどだった。

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もう時代は令和だよ。

 

 

 

 

人間が作り上げた不純物な灰色の硬い石の道を焦がす程の陽射しが降り注ぐ日々も過ぎ去って、ようやく穏やかになる頃に「地球史上最大の台風」というデマと共に暴風雨がやってきた。

それも過ぎ去って平穏な日常が少しずつ戻ってくる頃、わたしたちは東の都に集まっていた。

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2019/10/30よしだくん日記

わたしには変な友人がいる。

よしだくんっていうんだけど。

 

彼とは、実は出会い系アプリで知り合った。

暇を持て余した大学生の頃、好奇心でダウンロードしたTinderで。

左、右、とリズム天国でAキーを連打するような気持ちでスワイプしていたら、何人かからメッセージが来た。

その中に、村上春樹が好きでダンスダンスダンスの素晴らしさんについて、(「わかるなあ」「それな」を合いの手のように発言しながら)淡々と語る人がいた。よしだくんだ。

 

最初は、彼のことを非常に論理的に話したがるかっこつけた人だと思っていた。

で、二人でドイツビールを飲みに行った。「ベルギービールしか飲んだことない」というと、「わかってないな」と彼は真顔で言った。

彼の表情筋はすっかり固まっていて、「おっぱいなんて吸わずに生きてきた」とかっこつけているようにも見えた。

 

その日から、少しずつよしだくんはおかしなやつだと気づきはじめた。

もちろんその前からも、なんとなく「不思議な人」という感覚はあって、「変わってるね」とおどけることもあった。

でも、マジで「変わってる」のだ、よしだくんは。

例えば、よしだくんとLINEをしていて、私が「今日これ見たよ」的な、脳みその新皮質の表面をつるっと滑ったような話をすると、「ふうん」と急に歯切れが悪くなる。

あー、『つかめない人』という方がニュアンス的に正しいかもしれない。

好きな話題かなと思って村上春樹や哲学の話をしても「なるほど」という返事。焼却炉に投げ入れた瞬間、火が消えて「あら?」ってなる感じ。

きっと私とLINEしても楽しくないんだな、と私は思ってLINEの返事もめんどくさくなったことがあった。

それでも、彼からはLINEがきた。ツボをつかめると、LINEは続く(でもよしだくんワールドが展開されていくたびに私は「おもしろい」「なるほど」と語彙力を失っていく)。そして、ツボをつかめないと一瞬でLINEは終わる。そんな感じだった。

私はとても暇だったので、よしだくんのおしゃべりスイッチがどこにあるのかを模索するのが日常的になりつつあった。

 

そんなやつと、次に会ったのは高島屋だった。

よしだくんが沖縄から帰ってきてすぐだった。

彼はめちゃくちゃだんまりだった。

どんなことを話しかけても、薄い反応。「善意を持つ人を無視してはいけません」という言葉を、彼はかろうじて守っていた。

 

そのあと、ダーリンでなぜかめちゃくちゃ褒められた。

「ななこちゃんは大きな人だ」と。

私は割と褒め言葉を素直に受け入れる方だ。

だって嬉しいし。

でも、よしだくんのその褒め言葉は、すんなり入ってこなかった。

きっと、あの日のよしだくんがよしだくんじゃなかったら、あの日のことをなかったことにするだろう。

でもよしだくんは、それをむしろ大きく見せた。

 

その頃、よしだくんは言った。

「ぼくは共感能力が欠けているんだ」

なにかっこいいこと言ってんだ、とその時は笑って受け流した。

でも、時間がたった今、思うととてもなるほどと思った。

 

ソシュールという言語学者は、「fish」と「魚」は全く同じ意味合いではないと説いた。

その言語を扱う国や民族の文化や、地域によってイメージは変容されるからだ。

よしだくんとのコミュニケーション方法は、お互いに母国語である日本語だ。

それなのに、どこか話がふわっとしたり、論点を見失ったり、そんなことが多いのだ。

よしだくんとの会話は、まるで英語を翻訳したものを再翻訳した文章を読んでいるような感じだ。

 

 

そのとき、私はよしだくんへのイメージをこう定義づけた。

「ことばのひとつひとつに思い浮かべる意味合いやイメージがズレているので、共感能力が欠けているように見える」

もちろん、よしだくんの脳みそがぶっ飛んでいるというのもあると思うけれど、おそらくだけどよしだくんがそのぶっ飛んだ内容を伝えようとしたときの言語そのものまでズレていて、一般的な人間にとっては「変わり者、共感してくれない人」になってしまうんだろうと思った。

 

よしだくんは、「それは違う、ぼくは共感能力が欠けているんだよ」と反論してきそうだけど、私は違うと思う。

少しみんなと違う「よしだ」をよしだくんはアイデンティティにしているんだろうと思う。

その「みんなとちがうよしだ」はたまたま生まれた産物で、よしだくんが、かっこつけて作り出したわけではないと思う。

でも、今はその「よしだ」がよしだくんそのもののイメージであり、変わり者であることが生きがいになり、自らの足を引っ張りつつあることも黙認しているんだろうと思う。

その生きがいはめちゃくちゃ面白いので、ぜひ続けてほしい。

 

そんなよしだくんは、現在彼女募集中だ。

しかし、女性は、というか恋愛は、「共感してほしい」小さなことから大きなものまで共有するものだと捉える人も多いから、よしだくんはなかなか彼女をつくれない。んだと思う。

 

そんなよしだくんがあまりにも面白くて、私はよしだくんの恋愛事情を第三者目線でまとめあげたコラムを書くことに決めた。

これから、少しずつよしだくんの過去の恋愛とかを取り上げながら、ツッコミを入れていこうと思う。

 

というわけで、ななこ、ダーリンに帰ってきました。

ただいま!

ドアを開けて物干し竿の方を確かめると、もうすでに洗濯物は取り込まれたあとだった。ばーちゃんだな、と私は思う。
そのまま家に引っ込む代わりに、私はその場に腰を下ろした。ここは庭。芝生ではないけれど、座っていても誰も文句は言わないし。 “庭” の続きを読む